
ECの健康診断|見るべきKPIダッシュボードの作り方
「管理画面を開くと、数字がずらっと並んでいる。売上、アクセス、注文数、広告費……。全部大事そうに見えるけど、結局どこを見て、何を判断すればいいのか分からない」——そんなふうに、数字の海で迷子になったことはありませんか。毎日いろんな画面を開いては閉じ、なんとなく売上だけ眺めて、また明日。これでは、せっかくの数字が「ただ眺めるもの」で終わってしまいます。
必要なのは、たくさんの数字ではありません。自分の店の調子がひと目で分かる「健康診断表」を1枚持つことです。体の健康診断で、体重・血圧・血液検査の数項目を見れば全体の調子が分かるように、ECにも「ここだけ見ておけば大丈夫」という数字の組み合わせがあります。今日は、その1枚——KPIダッシュボードの作り方を、一緒に組み立てていきましょう。
結論:見るべきKPI(重要な指標/お店の調子を見るための数字)を 「売上・集客・転換・リピート・採算」の5つの箱に分けて、各箱から1〜2個だけ選ぶ。それを1枚の表(スプレッドシート1つで十分)にまとめ、週1回・5分で前の週と見比べる。数字を増やすのではなく、絞って・並べて・定点観測する。これだけで「なんとなく不調」が「どこが不調か」に変わり、打ち手に迷わなくなります。
いま何が起きているか|数字は多いのに、判断できない
ECの管理画面やGA4(Googleの無料アクセス解析ツール)には、何十もの数字が表示されます。数が多いこと自体は悪くありません。問題は、全部を平等に見ようとして、結局どれも見られていない状態です。
よくあるのは、こんなパターンです。
- 毎日「売上」だけ見て、上がった・下がったで一喜一憂する。原因までは追えない。
- たまに気合を入れて管理画面を開くが、数字が多すぎて疲れ、そっと閉じる。
- 広告の管理画面、カートの管理画面、GA4がバラバラで、つなげて見られない。
- 先月どうだったかを覚えていないので、今の数字が良いのか悪いのか判断できない。
これは、数字を見る力の問題ではありません。「見る数字を決めて、置き場所を1つにしていない」という、仕組みの問題です。健康診断と同じで、毎回測る項目が決まっているから、去年と比べて「血圧が上がってきた」と気づける。EC も、見る数字を固定して定点観測してはじめて、変化に気づけます。
KPIという言葉が難しく感じるかもしれませんが、構えなくて大丈夫です。KPI(Key Performance Indicator)とは、お店の調子を見るために、特に大事だと決めた数字のこと。たくさんある数字の中から「これとこれを見ておけば、お店の状態が分かる」というものを選んだもの、と考えてください。
具体例|5つの箱から選んで、1枚にまとめる

やることは「箱を5つ用意して、それぞれから見る数字を1〜2個だけ選ぶ」だけです。順番に組み立てていきましょう。
①売上の箱|結果を見る
- 売上高:いちばん大きな結果の数字。
- 客単価(1回の注文で使われる平均金額):売上を注文数で割ったもの。まとめ買いや単価アップの効果がここに出ます。
②集客の箱|どれだけ来てくれたか
- 訪問数(セッション数):サイトや商品ページに来てくれた回数。
- できれば流入元の内訳(検索・広告・SNS・リピート訪問)も。どこから来ているかが分かると、打ち手を選びやすくなります。
③転換の箱|来た人がどれだけ買ったか
- CVR(購入率/商品ページの買われやすさ):来てくれた人のうち、実際に買った人の割合。100人来て2人買えば2%です。アクセスはあるのに売れない、を見つける数字です。
④リピートの箱|どれだけ続けて買ってもらえたか
⑤採算の箱|利益が残っているか
- ROAS(広告費に対してどれくらい売上が出たか) または CPA(お客さん1人を獲得するのにかかった広告費)。売上が伸びても、ここが悪ければ手元にお金は残りません。
- 可能なら粗利率も。詳しい採算の考え方は利益率・原価管理入門が参考になります。
この5つの箱から、最初は各1個ずつ・合計5〜6個だけで十分です。スプレッドシートに「週/売上/訪問数/CVR/客単価/リピート率/ROAS」と列を作り、毎週1行ずつ足していく。たったこれだけで、立派なKPIダッシュボード(お店の健康診断表)になります。
やりがちなNGと、その直し方
・最初から20個も並べる:見るのが負担になって続かない。→ 各箱1個、合計5〜6個から始める。
・毎日数字を追って一喜一憂する:日々の上下に振り回される。→ まずは週1回、週単位でならして見る。
・数字を記録するだけで比べない:変化に気づけない。→ 必ず「前の週・前の月」と横に並べて差を見る。
・全部のKPIを同時に改善しようとする:力が分散する。→ いちばん悪化した1箱に絞って手を打つ。
・目標値を業界平均でガチガチに決める:自分の店に合わない。→ まずは自店の過去と比べ、徐々に目標ラインを引く。
数字を選んだら、「いつ・誰が・どこを見るか」も決めておくと続きます。たとえば「毎週月曜の朝、先週分を1行入力して、前の週と見比べる。5分で終える」。この“5分の習慣”が、ダッシュボードを生きた道具にします。どの数字をどう読むかは、入口としてEC担当者が見るべき指標10個も合わせてどうぞ。
あなたへの影響
- 見る数字が5〜6個に決まると、毎日の「何を見ればいいか分からない」がなくなります。管理画面を開く時間が減り、判断は速くなります。
- 前の週・前の月と並べる習慣がつくと、不調のサインに早く気づけます。「先週から訪問数は変わらないのにCVRだけ落ちている」のように、原因の箱が見えるので、次の一手に迷いません。
- 5つの箱で会話できるようになると、支援会社や上司への報告もぶれません。「売上が落ちた」ではなく「集客は横ばい、転換が落ちている」と言えれば、相談も打ち手も的確になります。
- 採算の箱を入れておくことで、「売上は伸びたのに利益が残らない」という落とし穴に早く気づけます。
明日やること
- スプレッドシートを1枚用意し、「週・売上・訪問数・CVR・客単価・リピート率・ROAS(またはCPA)」の列を作る。
- 今週の数字を、管理画面とGA4から拾って1行だけ入力する。完璧でなくてOK。分かる範囲で。
- 先週(または先月)の数字も1行入れて、横に並べて差を見る。一番大きく下がっている箱を1つ見つける。
- 毎週○曜の朝5分、1行追加して見比べる、という時間をカレンダーに登録する。
- 慣れてきたら、流入元の内訳やLTVなど、各箱の2個目を少しずつ足す。
KPIダッシュボード作成チェックリスト
- 「売上・集客・転換・リピート・採算」の5つの箱を意識して数字を選んでいる
- 最初は各箱1個・合計5〜6個に絞れている
- 数字の置き場所を1枚(スプレッドシート1つ)にまとめている
- 毎週・同じ曜日に更新する習慣を決めている
- 前の週・前の月と横に並べて差を見ている
- 一喜一憂ではなく、一番悪化した箱を1つ選んで手を打っている
- 採算(ROASやCPA・粗利)の数字も入れて、利益が残っているか確認している
- 慣れてきたら流入元の内訳やLTVなど2個目を足している
数字は、あなたを責めるためのものではありません。お店の調子を教えてくれて、次の一手をそっと指し示してくれる味方です。たくさんの数字に振り回される日々から、1枚の健康診断表をゆっくり眺める習慣へ。まずは今週の数字を、1行だけ書き込んでみましょう。続けるうちに、自分の店の“いつもの調子”が分かるようになり、変化にいち早く気づける、頼もしい店長に変わっていけます。

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