会員リストと電卓を前に、毎月どれくらいの人が離れているかを静かに確かめているショップ担当者

サブスクの解約率(チャーンレート)の出し方と下げ方の基本

「今月も新しい定期のお客さんが入ってくれた。広告もそこそこ回っている。なのに、会員数の合計はほとんど増えていない」——サブスク(定期購入・頒布会など、続けて買ってもらう仕組み)を運営していると、この不思議な感覚に出会うことがあります。バケツに一生懸命お水を注いでいるのに、いっこうに水位が上がらない。その理由は、たいていバケツの底に空いた小さな穴、つまり静かに進む解約にあります。

その穴の大きさを教えてくれる数字が、今日のテーマ 解約率(チャーンレート) です。名前は少しいかめしいですが、中身は割り算ひとつ。一度自分のお店の数字で出してみると、「なぜ会員が増えないのか」「どのタイミングで人が離れているのか」が、驚くほどはっきり見えてきます。今日は、電卓ひとつでできる測り方と、そこから下げ方までを一緒にたどっていきましょう。

結論:解約率(チャーンレート=一定期間にどれくらいの割合のお客さんが解約したかを見る数字)は、「その期間に解約した人数 ÷ 期間はじめの継続会員数」 で出します。まずは月ごとの解約率を出し、継続率(100%から解約率を引いた、残ってくれた人の割合) とセットで眺めるのが基本です。
さらに、入会した月ごとにグループ(コホート)を分けて追うと、「入って何か月目でいちばん抜けるか」が見えます。多くのお店では初月〜2か月目の離脱がいちばん大きいので、そこを直すのが近道です。

いま何が起きているか|「入った数」だけを見て安心している

サブスクを始めると、多くのお店で「今月は新規が何件入ったか」という入口の数字ばかりを追いがちです。獲得のグラフが伸びていると、それだけで前に進んでいる気持ちになります。ところが、同じ月に裏側で何人が去っているかを見ていないと、実際の会員数は横ばい、ということが平気で起こります。

たとえば、月初の継続会員が1,000人いて、その月に新しく100人が入っても、同じ月に120人が解約していたら、月末は980人。入口だけ見れば「100件獲得!」ですが、実際は20人分、水位が下がっています。この"抜けていく側"の大きさを数字にしたものが解約率です。入口(獲得)と出口(解約)を両方見て初めて、サブスクの本当の健康状態が分かります。

解約率とセットで覚えたいのが継続率(リテンション) です。継続率は「残ってくれた人の割合」で、解約率とは表と裏の関係にあります。解約率が5%なら継続率は95%、という具合です。どちらか一方を出せば、もう一方は自動的に決まります。まずは、この2つを毎月そろえて記録するところから始めましょう。

解約率を「解約した人数 ÷ 期間はじめの会員数」で出すことを示した図
解約率は「出ていった人数 ÷ はじめにいた人数」。継続率はその裏返し(100%から引いた残り)。

具体例|電卓ひとつで出す解約率(3ステップ)

数字は説明のためのです(自社の実績ではありません)。自分のお店の数字に置き換えながら読んでください。まずは、いちばん基本となる「月ごとの解約率」を出してみましょう。

ステップ1:2つの数字を用意する

ここで大事なのは、新しく入った人(新規)は分母にも分子にも入れないことです。あくまで「もともといた人が、どれくらい残ったか/抜けたか」を見ます。新規を混ぜると、獲得の勢いで解約の穴が隠れてしまい、数字が実態よりよく見えてしまいます。

ステップ2:割り算する(解約率)

解約した人数 50人 ÷ 期間はじめの会員数 1,000人 = 5%(月次の解約率)

これが、その月に離れていった人の割合です。裏返して継続率も出しておきましょう。

100% − 解約率 5% = 継続率 95%

ステップ3:平均でどれくらい続くかに直す

月次の解約率が分かると、「お客さんは平均どれくらい続けてくれるか」の目安もざっくり出せます。「1 ÷ 月次解約率」 で、平均の継続月数の当たりがつきます。

1 ÷ 0.05(=5%)= 約20か月

つまり、毎月5%ずつ抜けていくお店では、1人のお客さんは平均して20か月ほど続いてくれる、という見立てです。解約率が3%まで下がれば「1 ÷ 0.03 =約33か月」と、続く長さがぐっと伸びます。わずか数%の差が、長い目で見ると大きな違いになることが分かります。

項目例の数字計算
期間はじめの会員数1,000人
その月の解約人数50人
月次の解約率5%50 ÷ 1,000
継続率95%100% − 5%
平均の継続月数約20か月1 ÷ 0.05

この平均継続月数は、1人のお客さんが将来くれる金額=LTV(お客さんが取引の期間を通じて払ってくれる金額の合計)を見積もるときにも役立ちます。くわしくはLTVの計算方法|「単価×頻度×継続」で顧客の価値を見える化するとあわせて読んでみてください。

具体例|「入会月ごと」に分けると、抜ける場所が見える

全体の解約率を1つ出すだけでも十分に役立ちますが、もう一歩踏み込むと打ち手が具体的になります。それがコホート(入会した月ごとのグループ) で見る方法です。

たとえば「6月に入会した人たち」を1つのグループとして、その後の継続率を月を追って記録します。これを入会月ごとに並べると、「入って何か月目で、どれくらい残っているか」が表になって見えてきます。

入会からの経過残っている割合(例)
1か月目(入会直後)100%
2か月目78%
3か月目70%
4か月目66%
5か月目64%

この例で目を引くのは、1か月目から2か月目にかけて一気に22%も抜けていることです。3か月目以降は落ち方がゆるやかになっています。全体の平均解約率をぼんやり眺めているだけでは、この「初月の大量離脱」は他の月に薄められて見えなくなってしまいます。コホートで分けると、「直すべきは初回の体験だ」とはっきり分かるわけです。

離脱には、大きく2つの山があります。ひとつは初月の離脱——「思っていた商品と違った」「量が多すぎた/少なすぎた」など、期待とのズレによるもの。もうひとつは中だるみの離脱——数か月続けたあとに「なんとなく使わなくなった」というもの。自分のお店がどちらの山で抜けているかを知ることが、次の一手を選ぶ出発点になります。

あなたへの影響|「増えない理由」が数字で分かる

解約率を下げる3つの入り口|どこから手をつけるか

解約率を下げるといっても、やみくもに引き止めるのは逆効果ですし、そもそも法律上も「解約しにくくする」設計は認められていません(通信販売の定期購入には、解約に関する表示のルールがあります。消費者庁の特定商取引法ガイドで最新の考え方を確認しておきましょう)。お客さんが気持ちよく続けたくなる方向で、次の3つを順番に見直すのがおすすめです。

大切なのは、数字(どこで抜けているか)を先に見てから、打ち手を選ぶことです。初月で抜けているのに中だるみ対策をしても、穴はふさがりません。解約率とコホートは、そのための地図です。

明日やること

  1. 月初の継続会員数と、その月に解約した人数の2つを書き出し、割り算して先月の解約率を出す(新規は分母・分子に入れない)。
  2. 「1 ÷ 月次解約率」で平均の継続月数をざっくり出し、いまの体感と合っているか確かめる。
  3. 直近数か月ぶんを入会月ごとに並べ、「何か月目でいちばん抜けているか」を1つだけ見つける。

解約率は、あなたを責めるための数字ではありません。「どこを直せば、お客さんともう少し長く付き合えるか」をそっと教えてくれる、いわばバケツの穴のありかを照らすライトです。まずは先月の数字で、割り算を1回。その一手が、「入っているのに増えない」というもやもやを、「ここを直せばいい」という確かな手応えに変えてくれます。

継続してくれるお客さんとの長い関係を思い描き、前向きに微笑むショップ担当者

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参考(公式・一次情報)