
コホート分析でリピートを読み解く|LTVを伸ばす第一歩
「毎月、新しいお客さんは来てくれている。広告も止めていない。なのに、売上のカーブがなかなか右肩上がりにならない……」
これ、ある程度まわり始めたお店ほどぶつかる壁です。新規はちゃんと取れているのに、全体の売上は横ばい。バケツに水を注ぎ続けているのに、いつまでも溜まらない感覚。
その正体は多くの場合、「新しく入ったお客さんが、その後どれくらい残っているか」を見ていないことにあります。今日ご紹介するコホート分析は、まさにこの「残り具合」を映し出す鏡です。特別なツールはいりません。表計算ソフト1枚から始められます。読み終える頃には、あなたのお店の「バケツの穴」がどこにあるか、見当がつくようになっているはずです。
結論:コホート分析(お客さんを「初めて買った月」でグループ分けし、その後の月にどれくらい戻ってきているかを追う見方)を使うと、新規の量ではなく「定着の良し悪し」が見えます。定着率が上向けば、LTV(1人のお客さんが長い付き合いの中で使ってくれる金額の合計)が伸び、同じ集客でも売上は積み上がっていきます。まずは直近半年を「初回購入月 × その後の購入率」の表にする――そこが第一歩です。
そもそもコホート分析とは?「入った月」でグループ分けして追う見方

コホート分析の「コホート」とは、同じ時期に同じ出来事を経験した仲間のグループのこと。ECでは「初めて買った月が同じお客さんたち」をひとつのグループとして扱います。
ふつうの売上分析は、月ごとの合計金額を横に並べて眺めます。でもそれだと、「6月の売上100万円」の中に、新規で入った人・先月から続けている人・久しぶりに戻った人が全部混ざっていて、中身が見えません。
コホート分析はここを分けます。「1月に初めて買った人たち」「2月に初めて買った人たち」……とグループを分け、そのグループがその後の月に何%戻ってきたかを追いかけます。すると、月ごとの売上という「混ざったスープ」が、グループごとの「戻り具合」に分解され、リピートの実態がくっきり見えてくるのです。
なぜ「合計の売上」だけでは危ないのか
合計の売上が伸びていても、その中身が「新規で無理やり数字を作っているだけ」だと、広告を止めた瞬間に一気にしぼみます。逆に、合計が横ばいでも定着率が上がっていれば、それは土台が厚くなっているサイン。合計だけを見ていると、この2つを見分けられません。コホート分析は「今の売上が、続く売上なのか・使い捨ての売上なのか」を教えてくれます。
具体例:架空のショップで「戻り具合」の表を作ってみる
言葉だけだとイメージしづらいので、架空の雑貨店で1枚の表を作ってみましょう。縦に「初回購入の月」、横に「その後、何か月後か」を置き、マスにはそのグループのうち再び買ってくれた人の割合を入れます。
| 初回購入の月 | 初回(人数) | 1か月後 | 2か月後 | 3か月後 |
|---|---|---|---|---|
| 4月に初回 | 200人 | 22% | 14% | 11% |
| 5月に初回 | 240人 | 20% | 13% | — |
| 6月に初回 | 300人 | 25% | — | — |
この表の読み方は、こうです。
- 横に読む(時間の流れ):4月グループは、1か月後に22%が戻り、2か月後は14%、3か月後は11%。減り方のカーブが分かります。急に落ちるのか、ゆるやかに残るのか。
- 縦に読む(グループの比較):同じ「1か月後」で比べると、4月22% → 5月20% → 6月25%。新しく入ったグループほど戻りが良くなっていれば、最近の施策(同梱物や初回フォローなど)が効いている証拠です。逆に新しいグループほど悪化していれば、集客の質が落ちているか、初回体験に問題があるサインです。
数字を作るときは、再計算で必ず検算しましょう。たとえば4月の1か月後22%は「4月初回の200人のうち、5月に1回以上買った人が44人」という意味。44 ÷ 200 = 22% と合っているかを確かめます。ここがずれると、以降の判断がすべて狂います。
「同じ人が2回目を買った率」に絞ると分かりやすい
最初から3か月後まで追うのが大変なら、まずは「初回のうち、2回目を買ってくれた人の割合(F2転換率)」の1列だけでも十分です。F2転換率(初めて買った人が2回目の購入に進んだ割合)は、リピートの入口であり、いちばん改善効果が大きい場所。この1列をグループごとに並べるだけで、「最近、2回目につながりやすくなっているか」が見えてきます。
あなたへの影響
- 定着率が見えると、「集客を増やすべきか・リピートを直すべきか」の判断がつきます。新規の戻りが悪いのに広告費だけ足すのは、穴の空いたバケツに水を注ぐようなもの。先に穴をふさぐほうが、同じお金で売上が積み上がります。
- LTVが数字で見えると、広告にいくらまでかけていいかの上限が決めやすくなります。1人が平均でどれくらい買ってくれるかが分かれば、獲得コストの許容ラインを勘ではなく根拠で引けます。
- 逆にコホートを見ないままだと、「新規は取れているのに儲からない」状態の原因が特定できず、施策が当てずっぽうになります。どのグループのどの時点で離れているかが分かれば、打ち手はぐっと具体的になります。
明日やること
- 注文データを書き出し、「顧客ID・初回購入日・各注文日」の3つが分かる状態にする(多くのカートやモールでCSVダウンロードできます)。
- 直近6か月ぶんで、縦に「初回購入の月」・横に「1か月後の再購入率」の1列だけの表をまず作る(F2転換率の一覧)。
- 縦に見て、新しいグループほど戻りが良くなっているか・悪くなっているかを確認し、傾向を1行メモする。
- いちばん戻りの悪いグループを1つ選び、その月の初回体験(同梱物・初回フォロー・配送品質)に心当たりがないか振り返る。
- 余裕があれば「2か月後」「3か月後」の列を足し、減り方のカーブを見る。
いきなり3か月後まで完璧な表を作らなくて大丈夫です。「初回月ごとの2回目率を並べる」――今日はそこまでで十分。その1枚が、来月からの改善の地図になります。
チェックリスト
- 注文データから「顧客ID・初回購入日・各注文日」を取り出せる
- 「初回購入の月」でお客さんをグループ分けできている
- グループごとの「1か月後の再購入率(F2転換率)」を出している
- 表を縦に見て、新しいグループの戻りが良化/悪化しているか確認した
- 表を横に見て、月を追うごとの減り方のカーブを見た
- 割合の計算を「人数 ÷ 初回人数」で検算した
- いちばん戻りの悪いグループの初回体験を振り返った

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