たくさんの商品が並ぶ棚を前に、EC担当者が「どれが本当に稼いでいるんだろう」と考えながら、売れている少数の商品にそっと手を伸ばしている情景

商品のABC分析 完全ガイド|売れ筋・死に筋を見極めて品揃えを整える

「うちで一番稼いでいる商品はどれですか?」——そう聞かれて、迷わず3つ挙げられるでしょうか。扱う商品が10点くらいなら、感覚でも分かります。でも、30点、100点と増えていくと、「なんとなく人気がある気がする商品」と「実際に売上を支えている商品」が、頭の中でだんだんズレていきます。よく問い合わせが来る商品が、じつは全然売れていない。地味だと思っていた定番が、静かに売上の柱になっている。そんなことは、珍しくありません。

商品が増えると、私たちはつい「全部の商品を、まんべんなく大事にしよう」としてしまいます。でも、力も時間も在庫のお金もかぎられています。全部を平等にがんばろうとすると、かえってどれも中途半端になり、稼いでいる商品にかけるべき手間まで薄まってしまう。だからこそ、「どの商品に力を入れ、どの商品からは静かに手を引くか」を、感覚ではなく数字で見極めるものさしが必要になります。今日は、そのいちばん基本で、いちばん役に立つ道具——ABC分析を、明日の棚卸しにそのまま使える形で一緒に組み立てていきましょう。

結論:商品を「売上の大きい順」に並べ、上からA・B・Cの3グループに振り分けるのがABC分析(売上への貢献度で商品をランク分けする見方)です。多くの店では、上位2〜3割の商品(Aグループ)が、売上の7〜8割をつくっています。だからまず、このAグループを絶対に切らさない・目立たせることに力を注ぐ。逆にCグループ(売上の下位で、ほとんど動かない商品=死に筋)は、すぐ捨てるのではなく「役割があるか」を見てから、絞る・入れ替えるを判断します。全部を平等にがんばらず、稼ぐ商品に力を寄せる——これがABC分析の目的です。

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いま何が起きているか|「なんとなくの人気」と「本当の稼ぎ頭」はズレる

まず、言葉を1つだけ整理させてください。ABC分析とは、商品やお客さんを、ある基準(多くは売上金額)の大きい順に並べて、上位から順に A・B・C の3つのグループに分ける方法です。名前の由来は、ただ「1番目・2番目・3番目のグループ」をアルファベットで呼んでいるだけ。むずかしい計算はありません。「大事なものから順に並べて、線を引いて仲間分けする」——ほぼそれだけの考え方です。

なぜ、こんな仲間分けが効くのか。その背景には、昔から知られている経験則があります。「売上の大部分は、一部の商品が生み出している」という傾向です。よく「上位2割の商品が、売上の8割をつくる」と言われ、これはパレートの法則(8:2の法則=一部が全体の大部分を占めるという経験則)とも呼ばれます。もちろん、きっちり8対2になるわけではありませんが、多くのECショップで「ごく一部の商品が、売上の大半を支えている」という形は、驚くほど当てはまります。

ここで問題になるのが、冒頭の話です。日々の運営をしていると、私たちの実感は「よく目にする商品」に引っぱられます。問い合わせが多い、レビューでよく話題になる、SNSでたまに反応がある——そういう商品を「人気商品」だと感じてしまう。でも、注目される回数と、実際に稼いでいる金額は、別ものです。手のかかる商品ほど印象に残り、静かに売れ続ける定番ほど記憶に残らない。この「感覚のズレ」が、品揃えや在庫の判断を少しずつ狂わせていきます。

その結果、こんなことが起きます。本当の稼ぎ頭(Aグループ)が、いつのまにか在庫切れになっていて機会損失(売れたはずの売上を逃すこと)を出している。逆に、ほとんど動かない商品(Cグループ)に、倉庫のスペースと仕入れのお金が塩漬けになっている。売れない在庫は、ただ置いてあるだけで保管料がかかり、お金の流れ(資金繰り)を圧迫します。ABC分析は、この「力の入れどころのズレ」を、数字で静かに正してくれる道具なのです。

ABC分析のやり方|表計算だけでできる4ステップ

商品を売上の大きい順に並べ、上からA・B・Cの3グループに線引きして仲間分けする様子を示した図
売上の大きい順に並べ、上からA・B・Cへ。上位の少数(A)が売上の大半を支えている。

高価なツールはいりません。管理画面から売上データを書き出して、表計算ソフトがあれば十分です。以下の4ステップで進めます。数字はすべて架空の例なので、ご自身の店の数字に置き換えて読んでください。

ステップ①:商品ごとの売上を、一定期間ぶん集める

まず、期間を決めます(例:直近3か月、または1年)。短すぎると季節のかたよりに振り回され、長すぎると今の実力から離れます。まずは直近3か月〜半年あたりから始めるのがおすすめです。そのうえで、管理画面から商品ごとの売上金額を書き出します。多くのカートやモール、あるいはGoogle アナリティクスの商品別レポートで、商品ごとの売上や購入数は確認できます(各機能の見方はGoogle アナリティクス ヘルプなどの公式情報で確認できます)。

ステップ②:売上の大きい順に並べる

書き出した商品を、売上金額の大きい順に上から並べ替えます。これだけで、「稼いでいる商品」と「そうでない商品」の姿が、ぼんやり見えてきます。表計算の並べ替え機能を使えば一瞬です。

ステップ③:上から順に「売上構成比の累計」を出す

ここが少しだけ手を動かすところです。まず、売上構成比(その商品が、全体の売上の何%を占めるか)を出します。1つの商品の売上 ÷ 全体の売上、です。次に、上から順にその割合を足し上げた数字(累計構成比)を計算します。上の商品から「ここまでで全体の何%になったか」を積み上げていくイメージです。

例で見てみましょう。

商品売上(例)構成比累計構成比ランク
商品ア40万円40%40%A
商品イ22万円22%62%A
商品ウ13万円13%75%A
商品エ8万円8%83%B
商品オ6万円6%89%B
商品カ4万円4%93%B
商品キ3万円3%96%C
商品ク2万円2%98%C
商品ケ1.2万円1.2%99.2%C
商品コ0.8万円0.8%100%C

ステップ④:累計の割合で線を引き、A・B・Cに分ける

最後に、累計構成比を目安に線を引きます。よく使われる区切りは、次のとおりです(あくまで目安で、店に合わせて動かして構いません)。

上の例だと、たった3商品(ア・イ・ウ)で売上の75%をつくっています。これがAグループ。一方、下の4商品(キ〜コ)を全部足しても、売上のわずか7%ほど。これがCグループです。「商品数の割に、稼ぎがどこに集中しているか」が、一目で分かるようになりました。

グループ別の打ち手|A・B・Cで「かける手間」を変える

分類はゴールではありません。分けたあとに、打ち手を変えることで初めて意味が出ます。グループごとに、力の入れ方を切り替えます。

Aグループ(稼ぎ頭)=「絶対に切らさない・もっと目立たせる」

ここが売上の柱です。まずやるべきは、在庫を切らさないこと。Aグループの欠品は、売上に直撃します。発注点(在庫がここまで減ったら発注する、という目安の数)を少し高めに設定し、優先的に在庫を確保します。次に、もっと売る工夫。商品ページの写真や説明を磨く、レビューを集める、広告を出すなら真っ先にここへ。手をかけた効果が、いちばん大きく返ってくる場所です。

Bグループ(中堅)=「Aへ引き上げられないか試す」

BはAとCの間で揺れ動く層です。「もう一押しでAに届きそうな商品」を見つけたら、セット販売やクロスセル(関連商品のおすすめ)でAグループに抱き合わせる、写真を撮り直す、といった小さなテコ入れを試します。反応がなければ深追いせず、様子を見ます。ここは「実験の場」だと考えると気が楽です。

Cグループ(死に筋候補)=「すぐ捨てず、まず“役割”を確かめる」

いちばん判断を間違えやすいのがCです。「売れていない=いらない」と即断すると、思わぬ落とし穴があります。Cグループの中には、売上は小さいけれど、大事な役割を持つ商品が混じっているからです。たとえば——

だからCグループは、「まず役割を確かめてから、絞る・入れ替える・値下げして売り切る」の順で判断します。役割のない、ただ場所とお金を塩漬けにしているだけの商品は、在庫を売り切って終売にする、あるいは予約・受注生産に切り替えるなどで、身軽にしていきます。ここで空いた在庫のお金と棚を、Aグループの拡充に回す——これがABC分析のいちばんおいしい使い方です。

具体例|「よく問い合わせが来る商品」を切らなくてよかった話

架空のセレクト雑貨店で考えてみましょう。ある担当者は、感覚的に「サポートの手間がかかる高価格の商品Xは、あまり儲かっていない気がする。やめようか」と考えていました。問い合わせが多く、印象が悪かったからです。

そこでABC分析をしてみると、意外な事実が見えてきました。商品Xは売上金額ではBグループ。目立ちはしないけれど、そこそこ稼いでいます。さらに、購入データを一緒に見ると、商品Xを買ったお客さんの多くが、同時にAグループの定番品もまとめ買いしていたのです。商品Xは「入口」になって、店全体の客単価(1回の注文で使われる金額)を押し上げていました。もし感覚だけで切っていたら、Aグループの売上まで一緒にしぼんでいたかもしれません。

一方で、担当者が「地味だけど手堅い」と思っていた別の商品Yは、分析するとまぎれもないCグループの底。売れ行きも鈍く、他の商品と一緒に買われることもなく、粗利も普通。ここは在庫を追加せず、いまある分を売り切って終売にしました。空いた仕入れ予算は、いちばん売れているAグループの商品Zの在庫確保に回した——結果、Zの欠品による機会損失が減り、店全体の売上は前より安定しました。

この話のポイントは、「印象」と「数字」が食い違っていたことです。切ろうとした商品は残すべきで、手堅いと思った商品は畳むべきだった。感覚だけで判断していたら、逆のことをしていたでしょう。ABC分析は、こうした思い込みを、静かに、けれど確実に正してくれます。

もう一歩|「売上だけ」で分けない工夫

売上の大きさと利益率という2つのものさしで商品を見ると、同じ商品でも評価が変わることを示した図
売上が小さくても利益率が高い「隠れ優等生」を、売上だけで切らないために。

基本は「売上金額」で分けますが、慣れてきたら別のものさしでもABC分析してみると、見える景色が変わります。

コツは、一度にたくさんの軸で見ようとしないこと。まずは売上で分ける。慣れたら利益でも分けてみる。2つの結果を見比べて、「売上は大きいのに利益は薄い商品」「売上は小さいのに利益は厚い商品」を見つける。このズレにこそ、次の打ち手のヒントが眠っています。

あなたへの影響

明日やること

  1. 分析する期間を決める(まずは直近3か月〜半年がおすすめ)。
  2. 管理画面から、商品ごとの売上金額を書き出す。
  3. 売上の大きい順に並べ替え、上から累計の売上構成比を出す。
  4. 累計 70%(または80%)/90% を目安に線を引き、A・B・Cに分ける。
  5. Aグループを1つ選び、在庫が切れていないか・もっと目立たせられないかを今日中に確認する。
  6. Cグループの下位を1つ選び、「役割があるか(ついで買い・利益率・品揃えの幅)」を確かめてから、絞るか売り切るかを判断する。
  7. 慣れたら、利益(粗利額)でも同じ分析をして、売上との“ズレ”を探す。

商品のABC分析 チェックリスト

つまずきやすい落とし穴

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整理された棚の前で、稼ぎ頭の商品を中心に据えた品揃えに自信を持ち、前を向いて次の一手を考えるEC担当者

商品が増えるほど、「全部を平等に大事にしよう」という気持ちは、やさしさであると同時に、力の分散にもなります。ABC分析は、その気持ちを否定するものではありません。かぎられた力を、いちばん効くところへ寄せるための道具です。まずは今の売上データを大きい順に並べて、線を1本引いてみるだけでいい。稼ぎ頭が見え、静かな死に筋が見え、次に何をすべきかが、すっと分かるようになります。感覚に頼っていた品揃えの判断が、数字に支えられた自信に変わる——その最初の一歩を、今日の棚卸しから始めてみてください。

参考(公式・一次情報)