
客単価(AOV)の分解|「単価×点数」で伸ばす一手を見つける
「客単価を上げたい」。会議でそう言われて、とりあえず値上げを考えてみる。でも、値上げしたらお客さんが離れそうで怖い。かといって、まとめ買いの仕掛けをどう作ればいいのかも分からない——。客単価という言葉は聞くけれど、いざ「上げよう」となると、何から手をつければいいのか止まってしまう。そんな経験、ありませんか。
実は、客単価は「上げよう」と気合いで押すものではありません。まず2つに分けて、弱いほうを見つける。それだけで、あなたの店に合った一手が自然と決まります。今日は、客単価をやさしく分解して、明日やることを1つに絞るやり方を、一緒に身につけていきましょう。
結論:客単価(1回の注文で使われる平均金額。AOV=Average Order Value とも呼びます)は、「平均商品単価 × 1注文あたりの購入点数」 の2つに分解できます。
まずこの2つを出し、自分の店で弱いほう(伸びしろのあるほう)を見きわめる。①単価が低いなら上位商品やセットで単価を上げる、②点数が少ないなら「ついで買い」を後押しする。分けて見れば、値上げすべきか・点数を増やすべきかで迷わなくなります。
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いま何が起きているか|「客単価」1つでは、打ち手が決まらない
売上を伸ばす方法は、大きく3つしかありません。お客さんを増やす(集客)、買ってくれる割合を上げる(CVR=商品ページの買われやすさ)、そして1人あたりの金額を上げる(客単価)。このうち客単価は、広告費をかけずに利益を厚くできる、いちばん見落とされがちな伸びしろです。集客やCVRの分け方はEC売上の分解でまとめていますが、今日はその中の「客単価」だけを、もう一段くわしく開いていきます。
ここでつまずく人が多いのは、「客単価」を1つのかたまりとして見てしまうからです。客単価が3,000円だとして、それが「3,000円の商品を1点」なのか「1,000円の商品を3点」なのかで、次にやるべきことはまったく変わります。前者は点数を増やす余地があり、後者は単価を上げる余地がある。同じ客単価でも、中身によって打ち手は正反対になるのです。
だからこそ、客単価はいったん2つに分けます。
客単価 = 平均商品単価 × 1注文あたりの購入点数
- 平均商品単価:1点あたり平均いくらの商品が買われているか。
- 購入点数:1回の注文で平均何点買われているか。
たとえば客単価3,000円でも、「単価2,900円 × 1.03点」の店と「単価900円 × 3.3点」の店では、体質がまるで違います。前者は「ついで買い」がほぼ起きていない店、後者は「安いものをまとめ買い」されている店。どちらを伸ばすかが見えれば、値上げに怯えることも、的外れな施策に時間を溶かすこともなくなります。
具体例|「単価×点数」に分けて、弱いほうを見つける手順

やることは「2つの数字を出して、比べる」だけです。順番にいきましょう。
①ある期間の「客単価・平均商品単価・購入点数」を出す 一定期間(先月ぶんなど)の 売上 ÷ 注文数 = 客単価、販売点数 ÷ 注文数 = 平均購入点数、売上 ÷ 販売点数 = 平均商品単価 を計算します。カートの管理画面の「売上・注文数・販売点数」があれば電卓で出せます。GA4(アクセス解析ツール)を使っている場合は、eコマースのレポートで平均購入額や購入点数を確認できます(最初の見方はGA4でEC売上を見る最初の一歩が入口です)。
②「単価」と「点数」、どちらが弱いかを見きわめる 出した2つを、自分の感覚や過去と比べます。判断の目安は次のとおりです。
- 購入点数がほぼ1.0点に張り付いている:ついで買いがまったく起きていない。→ 点数を増やす余地が大きい。
- 平均商品単価が、扱っている商品の中でかなり安い側に寄っている:安い入口商品ばかり買われている。→ 単価を上げる(上位商品へ案内する)余地がある。
- どちらも過去より下がっている:値引き商品やセール品に偏っていないか、クロスセルの導線が消えていないかを疑う。
③弱いほうに合った打ち手を1つ決める 伸ばす場所が決まれば、施策は自然に絞られます。
- 点数が弱い → 「ついで買い」を後押しする。関連商品のおすすめ、セット販売、あと少しで送料無料になる「もう1点」の見せ方など。具体策は客単価を上げるセット販売・クロスセルにまとめています。クロスセル(関連商品の追加提案)とは、ハンバーガー店の「ご一緒にポテトは?」と同じ発想です。
- 単価が弱い → 上位商品やまとめ買いへ案内する。松竹梅の3段の選択肢を用意し、比べて選んでもらう「比較表で選ぶ理由を作る商品ページ」が効きます。いきなりの値上げではなく、高いほうを選びやすくするのがコツです。
- 送料無料ラインの設計 → 「あと〇円で送料無料」は、点数・単価の両方に効く定番の一手。無料になる金額の決め方は、EC利益計算ツールの送料無料ライン計算で、利益が残る水準から逆算できます。
やりがちなNGと、その直し方
・いきなり全商品を値上げする:CVR(買われやすさ)が落ちて逆効果になりがち。→ まず「点数」で伸ばせないかを先に見る。
・客単価の総額だけ見て一喜一憂する:中身が分からず再現できない。→ 必ず「単価×点数」に分ける。
・値引き・クーポンで客単価を作る:一時的に上がっても利益は減る。→ 客単価は「利益の残る形」で上げる。値引き設計は原資から逆算する。
・平均だけで判断する:一部の高額注文が平均を押し上げていることも。→ ときどき注文の中身(何が何点買われたか)も実際にのぞく。
なお、客単価は上げること自体が目的ではありません。無理に上げてCVRやリピートを損なっては本末転倒です。客単価は、1人のお客さんが長く買ってくれる金額(LTV=顧客生涯価値)を伸ばす一部だと考え、点数・単価・リピートのバランスで見ていきましょう。
あなたへの影響
- 客単価を「単価×点数」に分ける習慣がつくと、「客単価を上げろ」という漠然とした宿題が、「うちは点数が弱いから、ついで買いを作ろう」のような具体的な一手に変わります。迷いが減り、動き出しが速くなります。
- 弱いほうから手をつけるので、広告費をかけずに利益を厚くできます。集客を増やさなくても、同じ来訪者の中で1注文あたりの金額が増えれば、利益はそのまま積み上がります。
- 「値上げすべきか、点数を増やすべきか」で会議が空転しなくなります。数字で「単価は十分だが点数が1.0点に張り付いている」と言えれば、打ち手の合意が早くなります。
明日やること
- 先月の 売上・注文数・販売点数 の3つを用意する(カート管理画面 or GA4)。
- 客単価=売上÷注文数、購入点数=販売点数÷注文数、平均商品単価=売上÷販売点数 を電卓で出す。
- 「単価」と「点数」を見比べ、弱い(伸びしろのある)ほうを1つ選ぶ。
- 選んだほうに合う打ち手を、上の「③」から1つだけ決めて、今週の作業にする。
客単価分解チェックリスト
- 客単価を「平均商品単価 × 購入点数」の2つに分けて見ている
- 2つのうち、自分の店で弱い(低い)ほうを1つに絞れている
- 点数が弱いなら「ついで買い」、単価が弱いなら「上位・まとめ買い」の打ち手を選んでいる
- いきなりの値上げでなく、CVR(買われやすさ)を落とさない上げ方を選んでいる
- 値引き・クーポンで客単価を「作って」いないか(利益が残る形か)を確認している
- 送料無料ラインを、利益が残る水準から逆算して決めている
- 施策後、もう一度「単価×点数」を出して効果を確かめている
客単価は、気合いで押し上げるものではありません。平均商品単価と購入点数という、あなたが動かせる2つの数字でできています。値上げに怯える前に、まず2つに分けてみる。弱いほうが見えれば、「次の一手」は驚くほどはっきりします。今月の注文を「単価×点数」に開くところから、始めてみましょう。迷いが晴れて、値付けにも施策にも自信を持てる自分に、きっと変わっていけます。

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