
EC売上目標の立て方|「客数×客単価×頻度」で無理なく逆算する
「来期はいくらを目指す?」——期の変わり目にそう聞かれて、少し言葉に詰まった経験はありませんか。去年より1割増し、なんとなくキリのいい数字……そうやって決めた目標は、日々の運営とつながらず、気づけば「ただの飾り」になってしまいがちです。
でも、大丈夫です。売上目標は、才能や勘で決めるものではありません。たった3つの数字のかけ算に分けて、下から積み上げれば、「なぜその数字なのか」を自分の言葉で説明できる目標になります。今日は、明日から使える売上目標の立て方と、それを裏づける予算計画のつくり方を、一緒に組み立てていきましょう。
結論:ECの売上目標は「客数 × 客単価 × 購入頻度」の3つに分解して逆算するのが基本です。まず現状の3つの数字を出し、そのうち一番伸ばしやすい1つを軸に目標を組み立てます。
そして目標とセットで、「その売上を出すのにいくら使えるか(広告費・原価など)」の予算計画を必ず用意します。目標だけあって予算がないと、頑張っても赤字、という事態が起きます。
いま何が起きているか
多くのお店で、売上目標が「昨年比◯%」というひとつの大きな数字のまま止まっています。この状態には、2つの落とし穴があります。
- どう動けばいいか分からない:目標が「年間3,000万円」のような1つの塊だと、日々の作業(広告を出す、メルマガを送る、商品ページを直す)とつながりません。何をどれだけやれば届くのかが見えないのです。
- 未達の原因が分からない:期末に「目標に届かなかった」と分かっても、客数が足りなかったのか、単価が下がったのか、リピートが減ったのかが分からない。だから次の期も同じ立て方を繰り返してしまいます。
ここで役に立つのが、売上を「客数 × 客単価 × 購入頻度」という3つのかけ算として見る考え方です。
- 客数:期間内に買ってくれた人の数(新しく買ってくれた人+また買ってくれた人)。
- 客単価(1回の注文で使われる金額):1回の買い物で、平均していくら使われたか。
- 購入頻度:同じ人が、その期間に平均して何回買ってくれたか。リピート率(もう一度買ってくれた人の割合)と近い考え方です。
この3つをかけ算すると、売上になります。目標をこの形に分けておくと、「客数をこれだけ、単価をこれだけ、頻度をこれだけにすれば届く」と、打ち手に落とし込めるようになります。国内のEC市場そのものは伸び続けていますが(経済産業省の電子商取引に関する市場調査などが参考になります)、市場が伸びていても、自店の3つの数字を見ていなければ取りこぼしてしまいます。

具体例:4ステップで目標をつくる
数字は説明のための例です(自社の実績ではありません)。自分のお店の数字に置き換えながら読んでください。
ステップ1:まず現状の3つを出す 過去1年(または直近の安定した期間)の実績から、3つの数字を出します。
- 客数:年間 1,000人
- 客単価:5,000円
- 購入頻度:1.4回/年
このとき売上は、1,000人 × 5,000円 × 1.4回 = 700万円。これが今の「地力」です。
ステップ2:一番伸ばしやすい1つを決める 3つを一気に全部伸ばそうとすると、たいてい中途半端になります。今の自分にとって一番動かしやすい1つを主役に選びます。
- 集客の手を打てる余地があるなら → 客数
- まとめ買いやセット販売の余地があるなら → 客単価
- 一度きりのお客さんが多いなら → 購入頻度(リピート)
たとえば「新規のお客さんは来ているのに、2回目につながっていない」お店なら、伸びしろは購入頻度です。ここでは購入頻度を1.4回 → 1.6回へ上げることを主役にしてみます。
ステップ3:かけ算で目標を組み立てる 主役の数字を動かし、他は現実的な範囲で少しだけ上乗せします。
- 客数:1,000人 → 1,100人(無理のない範囲で+1割)
- 客単価:5,000円 → 5,200円(送料無料ラインの見直しなどで微増)
- 購入頻度:1.4回 → 1.6回(ここが主役)
すると目標は、1,100人 × 5,200円 × 1.6回 = 約915万円。「昨年比◯%」ではなく、「3つの数字をこう動かすから、この売上になる」と説明できる目標になりました。
ステップ4:月・チャネルに割り振る 年間目標を12か月に割るときは、均等ではなく季節の波を反映させます。セール期やギフト需要の月は多めに、閑散期は少なめに。楽天・自社サイト・Amazonなど複数の売り場があるなら、売り場ごとにも割り振ると、日々の運営とつながります。
文章にすると、目標づくりはこう並びます。
| ステップ | やること | アウトプット |
|---|---|---|
| ① | 現状の3つ(客数・客単価・頻度)を出す | 今の地力(例:700万円) |
| ② | 一番伸ばしやすい1つを決める | 主役の数字(例:購入頻度) |
| ③ | 3つを動かしてかけ算する | 根拠のある目標(例:915万円) |
| ④ | 月・売り場に割り振る | 月次・チャネル別の目標 |
具体例:目標には「予算計画」を必ずセットにする
目標を立てたら、忘れてはいけないのが「その売上を出すのに、いくら使えるか」です。売上目標だけを追いかけると、広告費をかけすぎて「売れたのに利益が残らない」ことが起きます。
最低限、次の3つは目標とセットで決めておきましょう。
- 原価と粗利:売上のうち、商品原価・送料・決済手数料などを引いて、いくら手元に残るか。ここが分からないと、いくら広告に使えるかも決まりません。
- 使える広告費の上限:粗利の範囲から逆算します。目安として、新規獲得にかける費用(CPA=お客さん1人を獲得するのにかかる広告費)が、そのお客さんから見込める利益を超えないように設計します。
- かける手間(人件費・外注費):見落としがちですが、施策には人の時間もかかります。無理なく回せる量に収めることも計画のうちです。
ROAS(広告費に対して売上がどれだけ出たか)やCPAといった数字は、予算計画を支える道具です。むずかしく感じたら、まずは「粗利の中から広告に回せる金額」を1つ決めるところから始めれば十分です。
あなたへの影響
- 売上目標が「なぜその数字か」を説明できるようになり、日々の打ち手(集客・単価アップ・リピート施策)と一直線につながります。
- 未達のとき、3つのどこが崩れたかがすぐ分かるので、次の期の立て直しが速くなります。
- 予算計画をセットにすることで、「売れたのに利益が残らない」という一番つらい失敗を防げます。
- 月・売り場に割り振っておけば、期の途中で「今どのくらいのペースか」を確認でき、早めに手を打てます。
明日やること
- 過去1年の実績から、客数・客単価・購入頻度の3つを書き出す(かけ算して今の売上と合うか確認)。
- 3つのうち、自分が一番動かしやすい1つに印をつけ、そこを主役に来期の目標をかけ算で組み立てる。
- 目標とセットで「粗利の中から広告などに回せる金額」を1つ決め、年間目標を季節の波を見て月に割り振る。
売上目標は、あなたを縛るためのものではありません。「どこを、どれだけ伸ばすか」を自分で選ぶための地図です。3つの数字に分けた瞬間、ぼんやりした不安は「やることリスト」に変わります。まずは今の3つを書き出すところから。その一歩が、来期のあなたをぐっと楽にしてくれます。

チェックリスト
- 過去1年の客数・客単価・購入頻度の3つを数字で出した
- 3つをかけ算して、実際の売上とおおむね合うことを確認した
- 一番伸ばしやすい1つを主役に選んだ
- 「昨年比◯%」ではなく、3つの動かし方で目標を説明できる
- 目標とセットで「広告などに回せる金額(予算)」を決めた
- 原価・送料・手数料を引いた粗利を把握している
- 年間目標を、季節の波を見て月に割り振った
- 複数の売り場があるなら、売り場ごとにも割り振った
- 期の途中でペースを確認する日を決めた
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