倉庫の作業スペースで、お店の担当者が在庫棚のあいだに立ち、仕入れ予定のメモと残りの在庫を見比べて「そろそろ発注しよう」と考えている情景

入荷の遅れで欠品しない仕入れ設計|リードタイムを見込んだ発注のコツ

「先週頼んだあの商品、まだ入ってこない……」。棚の残りがどんどん減っていくのを見ながら、仕入れ先からの連絡を待つ。やっと「今週は間に合いません」とメールが来たころには、もう在庫は底。売れていた商品なのに、しばらく「売り切れ」の表示を出すしかない——。EC運営をしていると、一度はこんな入荷待ちのヒヤリを経験するのではないでしょうか。

やっかいなのは、これが「自分の発注ミス」とも言い切れないところです。頼むのを忘れたわけではない。ちゃんと在庫を見て発注した。それでも仕入れ先の都合や繁忙期の混雑で、入ってくるのが遅れる。遅れること自体は、お店の力ではなかなか止められません。

だからこそ効くのが、「遅れるかもしれない」をあらかじめ見込んで発注しておくという考え方です。今日お伝えするのは、特別なシステムではなく、仕入れにかかる日数(リードタイム)と、その“ブレ”を見込んで、少し早め・少し多めに頼んでおくという段取りづくり。これだけで、入荷待ちの欠品はぐっと減らせます。

結論:入荷の遅れによる欠品は、「在庫が切れてから慌てて発注する」のではなく「切れる前に、遅れを見込んで発注する」ことで防げます。鍵は3つ。①仕入れリードタイム(発注してから商品が入荷するまでの日数)を商品ごとに把握する → ②その日数がブレることを前提に、発注点(この在庫数になったら頼むという合図のライン)とバッファ(予備のゆとり分)を少し厚めに設定する → ③遅れそうな兆しは早めにつかみ、仕入れ先と連絡を取り合う。「遅れない前提」で組むから間に合わないのです。「遅れるかもしれない前提」で組めば、落ち着いて回せます。

いま何が起きているか|「切れてから頼む」では、もう間に合わない

多くのお店で、発注のタイミングは「棚を見て、少なくなってきたら頼む」という感覚に頼りがちです。売れ行きが安定していて、仕入れ先もいつもどおりに届けてくれるなら、それでも大きな問題は起きません。

つまずくのは、仕入れにかかる日数が、思っていたより長かったときです。ここで登場するのが「リードタイム」という言葉。仕入れリードタイム(発注してから商品が手元に入荷するまでの日数)は、いつも一定とは限りません。

ふだん7日で届くものが、繁忙期には14日かかる。これはよくある話です。ところが発注のラインを「7日で届く前提」で引いていると、残り日数が足りず、入荷を待つあいだに在庫が尽きます。これが入荷待ちの欠品(在庫切れで売れない状態)です。

欠品のいたいところは、売り逃しだけでは終わらない点にあります。売れていた商品が買えないと、お客さまは他店へ流れます。モール内での検索順位や、広告の費用対効果(かけた広告費に対してどれだけ売上が出たか)にも響きます。せっかく育てた商品ページが、在庫切れの数日間で勢いを失ってしまう。だから「遅れを見込んで、切らさない」ことには、見た目以上の価値があるのです。

具体例|入荷の遅れに強い発注のつくり方

在庫が減っていく線の上に「発注点」のラインを引き、通常より遅れても間に合うよう発注点を高めに設定していることを示した図
1日に売れる数 × 遅れも見込んだリードタイム + 安全在庫=発注点。このラインを在庫が下回ったら発注すれば、入荷が少し遅れても切らさない。

むずかしい計算はいりません。順番に3つ、整えていきましょう。

① 商品ごとに「仕入れリードタイム」を書き出す

まずは、売れ筋や切らすと困る商品について、「発注してから、実際に棚に入るまで何日かかったか」を記録します。勘ではなく、過去の発注履歴やメールの日付から拾うのがコツです。

この2つが分かるだけで十分です。「ふだんは7日、でも悪くすると14日かかることがある」——この“ブレの幅”こそが、備えるべき相手です。仕入れ先選びの段階からリードタイムや最低ロットを確かめておくと、あとが楽になります(選び方は商品の仕入れ先・卸の選び方もどうぞ)。

② 遅れを見込んで「発注点」と「安全在庫」を決める

次に、「在庫がこの数になったら発注する」というライン=発注点を決めます。考え方はシンプルです。

発注点 = 1日に売れる数 × リードタイム + 安全在庫

ここで大事なのが、リードタイムに「ふだんの日数」ではなく「遅れたときの日数」を少し見込むこと。安全在庫(欠品しないように持っておく最低限の予備)は、そのための“保険”です。

計算例(説明のための作例です)

このように、発注点を少し高め(早め)に引いておくと、入荷が多少遅れても切らさずにすみます。安全在庫や発注点の基本は在庫管理の基本|適正在庫と発注点と安全在庫と発注点の決め方でくわしく整理しています。

もちろん、持ちすぎれば現金が在庫に寝て、資金繰りが苦しくなります。切らさない安心と、持ちすぎない身軽さのバランスが肝心です。在庫が動く速さを見る指標(在庫回転率=在庫がどれくらいの早さで売れて入れ替わるか)もあわせて見ると、ちょうどよい量を探りやすくなります(在庫回転率・交差比率の見方)。

③ 遅れの兆しを早めにつかみ、仕入れ先と連絡を取り合う

発注点で備えても、想定を超える遅れは起こります。だから、遅れそうな兆しを早めにつかむ仕組みも用意しておきます。

よくあるつまずきと、その直し方
・「ふだんの日数」で発注点を引いている:遅れた瞬間に欠品。→ 発注点には「遅れたときの日数」を少し見込む。
・在庫が切れてから発注する:もう手遅れ。→ 発注点のラインを下回った時点で、自動で“発注の合図”が出るようにする。
・入荷予定日を控えていない:遅れに気づくのが遅れる。→ 発注時に予定日をメモし、近づいたら確認する習慣に。
・繁忙期も平常どおりに頼む:全体が混んで届かない。→ 需要期は前倒しで、早め・多めに。

複数の店舗やモールに出している場合は、どこかで売れた分が別の在庫数に反映されず「売り越し(在庫がないのに注文を受けてしまうこと)」が起きることもあります。在庫数を1か所でそろえる考え方は多店舗運営の在庫連動と一元管理が参考になります。

あなたへの影響

明日やること

  1. 売れ筋・切らすと困る商品を5〜10品ピックアップし、それぞれ過去の発注履歴から「ふだんの日数」と「いちばん遅れた日数」を書き出す。
  2. その商品の1日に売れるおおよその数を出し、「1日に売れる数 × 遅れも見込んだ日数 + 安全在庫」で発注点を仮に決める。
  3. いまの在庫数と発注点を見比べ、すでにラインを下回っている商品があれば、今日発注する。
  4. 発注したら入荷予定日をメモし、予定日が近づいたら確認する担当・タイミングを決める。
  5. 年末・連休など次の繁忙期の前倒し発注の目安日をカレンダーに書き込んでおく。

入荷の遅れに備える 発注チェックリスト

入荷した箱で棚が気持ちよく満たされ、お店の担当者が安心した笑顔で次の発注予定を確認し、前を向いている情景

関連記事・無料ツール

あなたのお店では、どの商品がいちばん「入荷待ちで切らしやすい」でしょうか。扱っている商材と、よく頼む仕入れ先のリードタイムを教えていただければ、無料診断で「切らさないための発注点の目安」を一緒に整理してお返しします。

参考(公式・一次情報)