
バスケット分析(併売分析)完全ガイド|一緒に買われる組合せを売上に変える
「この商品を買ったお客さんは、ついでに何を買っているんだろう」——レジ(注文データ)を眺めながら、ふとそう思ったことはありませんか。レジ横にガムを置くと売れる、という昔ながらのお店の工夫があります。ネットショップにも、同じ「ついで買い」の流れが、じつは毎日起きています。けれど画面の向こうのかごの中身は見えにくく、「たぶんこれとこれが一緒に売れているはず」という私たちの予想は、驚くほどよく外れます。
今日は、その見えないかごの中身を、注文データから静かに見える化する方法——バスケット分析(併売分析)を一緒に組み立てていきます。むずかしい数式の話ではありません。「何と何が一緒に買われているか」を数えて、売上につながる組み合わせを見つけ、セット販売やおすすめ表示に活かす。レジ横のガムを、あなたのお店のデータから見つける作業です。
結論:バスケット分析(併売分析=1回の注文の中で、何と何が一緒に買われているかを調べる見方)は、①注文データから「同じ注文に入っていた商品の組み合わせ」を数える → ②その組み合わせが『よく起きるか』『偶然ではないか』を、支持度・信頼度・リフトという3つのものさしで確かめる → ③強い組み合わせを、セット販売・おすすめ表示・同梱提案に落とす、の3ステップで進めます。鍵は、「ただ一緒に売れている」だけで飛びつかないこと。売れ筋同士は何もしなくても一緒に売れます。大事なのは「その商品を買った人は、“ふだんより”この商品を買いやすい」という、意外なつながりを見つけることです。
いま何が起きているか|「予想した組み合わせ」はたいてい外れる
まず、言葉を1つ整理させてください。バスケット分析とは、お客さんの「買い物かご(バスケット)」=1回の注文の中身を見て、どの商品とどの商品が一緒に入っていることが多いかを調べる分析です。「併売分析」「アソシエーション分析」と呼ばれることもありますが、やっていることは同じ。「一緒に買われる組み合わせを見つける」、それだけです。
なぜ、わざわざデータで見るのでしょうか。それは、私たちの「予想」が、かなりの確率でズレるからです。たとえばアパレルなら「このトップスには、あのボトムスが合うはず」とスタッフは考えます。ところが実際の注文を数えてみると、お客さんはまったく別の定番インナーと一緒に買っていた——そんなことは日常茶飯事です。作り手の「合わせてほしい組み合わせ」と、お客さんの「実際に合わせる組み合わせ」は、別ものなのです。
そしてもう1つ、見落としやすい落とし穴があります。「一番売れている商品」は、何と組んでも一緒に売れて見えるという点です。人気商品Aは注文の多くに入っているので、商品Bと一緒に買われる回数も自然に多くなります。これを「AとBは相性がいい」と早合点すると、打ち手を間違えます。本当に知りたいのは「Aを買った人が、ふだんよりBを買いやすいか」。この“ふだんより”を見分けるために、次の3つのものさしを使います。
3つのものさし|支持度・信頼度・リフトをやさしく読む

バスケット分析では、組み合わせの強さを次の3つの数字で見ます。名前はいかついですが、意味はとてもシンプルです。数字はすべて架空の例です。
- 支持度(サポート)=その組み合わせが、全注文のうちどれくらいの割合で起きているか。
たとえば全1,000注文のうち、商品Aと商品Bが一緒に入っていた注文が80件なら、支持度は8%。「そもそも、どれくらいよく起きる組み合わせか」を見る数字です。支持度が低すぎる(ごく一部の注文でしか起きない)組み合わせは、見つけても売上インパクトが小さく、打ち手に使いにくいことが多いです。
- 信頼度(コンフィデンス)=Aを買った人のうち、どれくらいがBも買っているか。
商品Aが入った注文が200件、そのうち80件にBも入っていたなら、信頼度は80 ÷ 200=40%。「Aを買ったら、Bも買う確率」です。「Aを買った人にBをすすめると効きそう」という、おすすめ表示の自信につながります。
- リフト=その組み合わせが『偶然より、どれだけ起きやすいか』。
これがいちばん大事なものさしです。リフトが1より大きいほど「AとBは、偶然一緒に買われる以上に、相性がいい」。1だと「ただの偶然(無関係)」、1より小さいと「むしろ一緒には買われにくい」。先ほどの「売れ筋同士は何でも一緒に売れて見える」問題を、このリフトが見抜いてくれます。信頼度が高くても、Bがもともと誰にでも売れる超定番なら、リフトは1前後にしかなりません。信頼度で“確率”を見て、リフトで“意外さ”を確かめる——この2段構えが、打ち手の精度を分けます。
この記事で出てくる主な数字
* 支持度:その組み合わせが、全注文のどれくらいで起きているか
* 信頼度:Aを買った人のうち、Bも買った割合
* リフト:偶然より、どれだけ一緒に買われやすいか(1が偶然、1超で相性よし)
迷ったら、まずは「リフトが1より十分大きく、支持度もそこそこある組み合わせ」を探す、と覚えてください。意外性(リフト)と、売上インパクト(支持度)の両方があるところに、おいしい打ち手が眠っています。
バスケット分析のやり方|表計算だけでできる4ステップ
高価な分析ツールは、最初は要りません。注文データ(CSV)と表計算ソフトがあれば、小さく始められます。GoogleアナリティクスのeコマースレポートやECカートの分析機能に「一緒に購入された商品」が用意されていることもあります(各機能の見方はGoogle アナリティクス ヘルプなどの公式情報で確認してください)。ここでは、手元のデータから自分で数える基本の流れを4ステップで示します。
ステップ①:期間を決めて、注文明細を書き出す
まず期間を決めます(例:直近3か月〜1年)。短すぎると偶然に振り回され、長すぎると今の品揃えと合わなくなります。そのうえで、「注文番号」と「その注文に入っていた商品」が分かる形で注文明細を書き出します。1注文に複数商品が並ぶ、いわゆる明細データです。
ステップ②:気になる商品を1つ決めて、「一緒に入っていた商品」を数える
いきなり全商品の総当たりをやると大変なので、まずは主力商品やリピートの多い商品を1つ選びます。その商品が入った注文だけを抜き出し、同じ注文に他に何が入っていたかを数え、多い順に並べます。これだけで「この商品のついで買いトップ5」が見えてきます。
ステップ③:支持度・信頼度・リフトを出す
数えた組み合わせについて、先ほどの3つの数字を計算します。例で見てみましょう。
| 組み合わせ | 一緒に買われた注文数 | 支持度 | 信頼度(Aを買った人のうち) | リフト |
|---|---|---|---|---|
| 商品A × 商品B | 80 / 1,000 | 8% | 40% | 2.5 |
| 商品A × 商品C | 120 / 1,000 | 12% | 60% | 1.1 |
| 商品A × 商品D | 30 / 1,000 | 3% | 15% | 3.0 |
この表の読み方がポイントです。信頼度がいちばん高いのは商品C(60%)ですが、リフトは1.1。Cはもともと誰もが買う超定番なので、「Aを買ったから」ではなく「みんな買うから」一緒に入っているだけ。打ち手にしてもあまり上積みは期待できません。一方、商品Dは信頼度こそ15%と低いものの、リフトは3.0。つまり「Aを買った人は、ふだんよりかなりDを買いやすい」という意外なつながりがあります。支持度が3%とやや小さいので爆発力は限定的ですが、おすすめ表示や同梱提案の“隠し玉”になり得ます。そして商品Bは、信頼度40%・リフト2.5・支持度8%とバランスがよい。まずはこのBから手を打つのが王道です。
ステップ④:打ち手にする組み合わせを、2〜3個だけ選ぶ
たくさん見つかっても、一度に全部はやりません。「リフトが1より十分大きく、支持度もそこそこある」組み合わせを2〜3個に絞り、次の打ち手(セット販売・おすすめ表示・同梱提案)に落とします。欲張らず、効きそうな一手から試すのがコツです。
見つけた組み合わせの活かし方|4つの打ち手
分析はゴールではありません。見つけた組み合わせを、売上の形に変えるところまでやって、はじめて意味が出ます。代表的な打ち手は4つです。
- セット販売・まとめ買いにする:相性のいいAとBを「セット商品」や「まとめ買い割」にして、1回の注文で一緒に買ってもらう。客単価(1回の注文で使われる金額)を上げる王道です。見せ方はまとめ買い・セット割の「見せ方」設計が参考になります。
- 商品ページや買い物かごで「おすすめ」する:Aの商品ページやカート画面に、「この商品と一緒に買われています」としてBを出す。これがいわゆるクロスセル(関連商品のおすすめで“ついで買い”を促すこと)です。AIで強化する手順はAIで関連商品レコメンドを強化するにまとめています。
- 同梱・フォローメールで次を提案する:Aだけ買った人へ、後から「次はBがおすすめです」と伝える。注文直後のサンクスメールや同梱物でも使えます。
- 在庫と仕入れをそろえる:よく一緒に売れるAとBは、在庫も連動して切らさないようにする。片方だけ欠品すると、もう片方のついで買いまで取りこぼします。
どの打ち手も、「お客さんの“ついで買いしたい気持ち”を、ほんの少し後押しする」という点は共通です。押し売りではなく、「これもあると便利ですよ」という親切な一言を、データで裏づけて置いていくイメージです。
具体例|「合うはず」と「実際に合う」が違った話
架空のキッチン雑貨店で考えてみましょう。人気の鋳物ホーロー鍋Aを売る担当者は、「この鍋には、同じブランドの高級トングBを合わせてほしい」と考え、商品ページで熱心にBをおすすめしていました。ブランドの世界観としても、その組み合わせが“美しい”と感じていたからです。
ところがバスケット分析をしてみると、意外な事実が見えました。鍋Aと高級トングBのリフトは1.0前後。つまり「ただの偶然」で、特別に一緒に買われているわけではなかったのです。代わりに強く出たのは、鍋A × 専用のシリコン鍋敷きCの組み合わせ。信頼度はそこそこ、リフトは3.2と高く、「鍋Aを買った人は、ふだんよりかなり鍋敷きCを買いやすい」とはっきり分かりました。熱い鍋を食卓に出す場面を思えば、当たり前と言えば当たり前。でも、担当者の“こだわり”は、別の組み合わせを向いていたのです。
そこで、商品ページのおすすめをBからCに差し替え、鍋Aとシリコン鍋敷きCの「まとめ買い」導線を用意しました。結果、鍋Aの注文のうち鍋敷きCが一緒に売れる割合が上がり、客単価が静かに底上げされました。さらに、鍋敷きCの在庫が切れると鍋Aのついで買いまで落ちることが分かったため、2つの在庫を連動して管理するようにしました。この話のポイントは、「合うはず」という作り手の美意識と、「実際に合う」というお客さんの行動が、きれいに食い違っていたこと。バスケット分析は、その差を責めることなく、静かに教えてくれます。
もう一歩|使いこなしのコツと注意点
- まずは1商品から。全商品の総当たりは組み合わせが膨大で、見ているうちに疲れて続きません。主力商品やリピート品を起点に、「その商品のついで買い」を1つずつ崩していくのが現実的です。
- 季節とキャンペーンに注意。クリスマスやセール期間は、ふだんと違う組み合わせが一時的に増えます。「いつもの併売」を知りたいなら、イベントの山を外した期間でも見てみましょう。
- カテゴリ単位でも見る。商品1点ずつだと数が少なく、支持度が小さくなりがちです。「鍋カテゴリ × 調理小物カテゴリ」のように、少し束ねて見ると、安定したパターンが見つかります。
- 他の分析と組み合わせる。どの商品が稼いでいるかは商品のABC分析、売上がどこで決まるかはGA4で課題を分解する(集客×CVR×客単価)、お客さんを層で分けるならRFM分析。バスケット分析は、その中で「客単価を上げる打ち手」を見つける役割を担います。
あなたへの影響
- 客単価(1回の注文で使われる金額)が上げやすくなります。新規のお客さんを増やさなくても、いま買ってくれている人に「もう1品」を自然にすすめられるので、同じ集客でも売上が伸びます。
- おすすめ表示の精度が上がります。「売れ筋をとりあえず出す」から、「この商品を買う人が、ふだんより買いやすいもの」を出す、に変わります。クリックされ、買われる確率が上がります。
- 思い込みのセット企画から抜けられます。「合うはず」の押しつけではなく、「実際に合っている」組み合わせでセットを組めるので、売れ残りのセットを作りにくくなります。
- 在庫の切らしどころが分かります。一緒に売れる商品が見えるので、「片方だけ欠品してついで買いを逃す」事故を防げます。
- 特別なツールがなくても始められます。注文明細と表計算だけで、最初の一歩を踏み出せます。
明日やること
- 分析する期間を決める(まずは直近3か月〜半年がおすすめ)。
- 注文番号と商品が分かる形で、注文明細を書き出す。
- 主力商品を1つ選び、その商品が入った注文で「一緒に買われた商品」を多い順に数える。
- 上位の組み合わせについて、支持度・信頼度・リフトを出す。
- リフトが1より十分大きく、支持度もそこそこある組み合わせを2〜3個選ぶ。
- その1組を、セット販売・おすすめ表示・フォロー提案のどれか1つの打ち手に落とす。
- 打ち手の前後で、その2商品が一緒に売れる割合と客単価が変わったかを見る。
バスケット分析 チェックリスト
- 分析する期間を決めた(イベントの山に振り回されない長さ)
- 注文番号と商品が分かる明細データを用意した
- 起点にする主力商品を1つ決めた
- 「一緒に買われた商品」を数え、多い順に並べた
- 支持度・信頼度・リフトの3つを出した
- 信頼度が高くても、リフトが1前後なら「ただの偶然」として外した
- リフトが大きく支持度もそこそこの組み合わせを2〜3個に絞った
- 選んだ組み合わせを、具体的な打ち手(セット/おすすめ/フォロー)にした
- 一緒に売れる商品の在庫を、切らさないよう連動させた
- 打ち手の前後で、併売率・客単価の変化を確かめる計画を立てた
つまずきやすい落とし穴
- 信頼度だけで判断する:「Aを買った人の60%がCも買う」は魅力的に見えますが、Cが超定番ならリフトは1前後。上積みはほとんど出ません。必ずリフトで“意外さ”を確かめましょう。
- 支持度が極端に低い組み合わせに飛びつく:リフトが10でも、全体の0.1%でしか起きない組み合わせは、打ち手にしても売上はほぼ動きません。インパクト(支持度)とのバランスを見ます。
- 全商品を総当たりしようとする:組み合わせが膨大になり、途中で挫折します。1商品ずつ、主力から崩すのが続けるコツ。
- 分析して満足する:表を作って終わりでは1円も増えません。「セットにする」「おすすめに出す」まで必ず落とし込みます。
- 一度きりでやめる:併売の傾向は季節・流行・品揃えで変わります。四半期に一度など、定期的に見直すのが理想です。
- 押し売りにする:関連性の薄い高額品を無理にすすめると、かえって不信感につながります。あくまで「あると便利」の親切な提案にとどめましょう。
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あなたのお店の「よく一緒に買われる組み合わせ」、3つ挙げられますか。無料診断では、いまの注文データから“ついで買い”のヒントを一緒に探し、まず試すべきセットやおすすめ表示を1つお伝えします。

「この商品を買った人は、ついでに何を買っているんだろう」——その問いの答えは、あなたの頭の中ではなく、毎日たまっている注文データの中にすでにあります。バスケット分析は、その見えないかごの中身を、静かに照らしてくれる道具です。レジ横のガムを見つけるように、まずは主力商品を1つ選んで、一緒に買われている商品を数えてみてください。「合うはず」と思っていた組み合わせがただの偶然で、思いもしなかった組み合わせが本当の相性だった——そんな発見が、次の一手をきっと変えてくれます。