
AIで在庫発注のアラートを組む|欠品と過剰在庫を防ぐ第一歩
「あ、また在庫切らしてた」——注文画面で売り切れ表示に気づくのは、たいてい注文が入ったあと。あるいは逆に、なんとなく多めに仕入れた商品が倉庫の奥で眠ったまま、気づけば半年。在庫の発注は「勘と気合い」で回している、という現場は本当に多いです。忙しい日ほど確認が後回しになり、欠品(在庫がなくなって売れない状態)と過剰在庫(売れ残って現金が寝てしまう状態)の両方に足を取られてしまう。
そのつまずき、AIに「そろそろこの商品、発注どきですよ」と教えてもらう仕組みで、ずいぶん軽くできます。とはいえ大がかりな在庫管理システムを入れる話ではありません。今日お伝えしたいのは、手元の在庫表とAIを組み合わせて、発注のアラート(お知らせ)を小さく作るという、明日からでも試せる進め方です。そして大事な前提がひとつ——発注ボタンを押すのは、最後まで人。AIは「気づかせ役」に徹してもらいます。読み終えるころには、「まずは売れ筋の10商品から試してみよう」と思えるはずです。
結論:AIは、在庫データを読んで「そろそろ切れそう/余っています」を先に知らせてくれる、在庫管理の見張り役になります。ねらいは、欠品による売り逃しと、過剰在庫による資金の寝かせを、両方いっぺんに減らすこと。コツは3つ。①発注のものさし(発注点=これを下回ったら発注する在庫数)を先に決めてAIに渡す、②AIには「判断」ではなく「気づき(アラート案)」を出させる、③発注の最終決定は必ず人が、季節や仕入れの都合を踏まえて下す。AIは「速い見張り役」、責任を持つのは人、という線引きを外さないのが安全です。
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いま何が起きているか|在庫の「後手」をAIで先手に変える
これまで在庫の発注は、担当者が管理画面や在庫表を毎日にらんで、「そろそろこれ危ないな」と目視で気づくやり方が主流でした。SKU(エスケーユー=色やサイズ違いも含めた商品の管理単位)が数十点までなら回りますが、扱う商品が増えるほど、全部を毎日見きるのは現実的に難しくなります。結果として、よく売れる商品ほど欠品し、動きの鈍い商品ほど過剰に積み上がるという、いちばんもったいないパターンに陥りがちです。
ここ数年で変わったのは、対話型AI(ChatGPTなどの生成AI)や表計算ソフトのAI機能に、在庫データを渡して「発注が必要そうな商品を一覧にして」と頼めるようになったことです。人が全商品を見張らなくても、AIが「発注点を下回った商品」「逆に動きが止まっている商品」を先に拾い上げてくれます。表計算の関数だけでも近いことはできますが、AIを使うと「なぜこれが発注どきか」を一言添えてくれたり、条件をあいまいな言葉で伝えても汲み取ってくれたりする点が助けになります。在庫管理そのものの基本は在庫管理の基本|適正在庫と発注点の考え方もあわせてどうぞ。中小企業向けの在庫管理の解説はJ-Net21(中小機構)なども参考になります。
一方で、注意点もはっきりしています。AIは在庫データを読んで「それらしい発注リスト」を作るのは得意ですが、その判断が正しいかどうかまでは保証してくれません。とくに在庫では、次のような取りこぼしが事故につながります。
- 仕入れリードタイム(発注してから届くまでの日数)を考えずにアラートを出すと、「気づいたときにはもう手遅れ」になる。
- 季節やイベント(セール・母の日・年末など)による需要の山を読めず、平常時の基準で判断してしまう。
- 販売終了予定・入れ替え予定の商品まで「発注どき」と拾ってしまう。
- 元の在庫データが古い・間違っていると、そのまま間違ったアラートになる。
つまりAIは「発注候補を挙げる」ところまでは任せられても、「実際に何をいくつ頼むか」を決める完成品ではない、というのが今日の出発点です。この「もっともらしいけれど中身は要確認」という性質は、AIが事実にない情報をそれらしく書いてしまう現象と地続きです。付き合い方は生成AIのハルシネーション対策|ECで誤情報を出さない検証フローも参考になります。
具体例|売れ筋10商品で、発注アラートを組んでみる

大がかりな準備は要りません。まずはよく売れる10商品ほどに絞って、発注のアラートを組むところから始めます。流れは3ステップです。
① 発注のものさし(発注点)を先に決める
AIに「発注どきかどうか」を判断してもらうには、そのものさしが必要です。ここで使うのが発注点という考え方。ざっくり言うと「この在庫数まで減ったら発注する」というラインのことです。目安は次の式で作れます。
- 発注点 = 1日に売れるおよその数 × 仕入れが届くまでの日数(リードタイム)+ 安全在庫
「安全在庫」は、売れ行きが少しぶれても欠品しないための余裕分です。最初はきっちり計算しなくてかまいません。「だいたい1週間で届くから、1週間分+数日分の余裕」くらいのざっくりでも、勘だけよりずっと精度が上がります。この発注点を、商品ごとに在庫表へ1列足しておきます。数字の考え方は在庫管理の基本|適正在庫と発注点の考え方で詳しく触れています。
② AIに「発注アラート案」を作ってもらう
在庫表(商品名・現在の在庫数・発注点・リードタイムなどが並んだもの)を、後半の「コピペで使えるプロンプト」の形でAIに渡します。AIは「発注点を下回った商品」「近く下回りそうな商品」「逆に長く動いていない商品」を仕分けして、アラート案の一覧にしてくれます。ポイントは、AIに最終判断をさせないこと。「発注すべき」と言い切らせるのではなく、「発注候補」「様子見候補」として理由つきで挙げてもらいます。
③ 人が確認して、発注を決める
ここが人の出番です。AIが挙げた候補を、次の観点で確認します。
- 季節やイベントの予定(もうすぐセールで需要が跳ねる、逆に閑散期に入る、など)。
- 販売終了・入れ替えの予定がある商品ではないか。
- 仕入れ先の都合(最低ロット=一度に頼む最小の数量、休みや納期のずれ)。
- 元の在庫数が実際と合っているか(棚卸しとのズレがないか)。
これらは、その商品の背景を知っている人にしか判断できない部分です。AIのアラートはあくまで「見落としを防ぐ下地」。最後に人が、現場の事情を上乗せして発注を決めます。多店舗で在庫を持っている場合の連動は多店舗運営の在庫連動と一元管理もあわせてどうぞ。
やりがちなNGと、その直し方
・AIの発注リストをそのまま発注に流す:季節や入れ替えを無視して過剰・欠品を招く。→ 必ず人が最終確認してから発注する。
・リードタイムを入れずにアラートを組む:気づいたときには間に合わない。→ 発注点に「届くまでの日数」を必ず織り込む。
・全SKUをいきなり対象にする:数が多すぎて回らず、続かない。→ まず売れ筋10商品から。慣れたら広げる。
・古い在庫表を渡す:間違ったアラートになる。→ 在庫数はできるだけ最新に。棚卸しとのズレも先に直す。
ここで挙げた「10商品」「1週間分」などはすべて進め方の例です。自店の商材や仕入れの事情に合わせて置き換えてください。需要の山谷まで含めて在庫と価格を見直したいときはAIで需要予測・在庫と価格を最適化するが一歩進んだ内容です。
コピペで使えるプロンプト
そのままコピーして、( )の部分を自店の内容に置き換えて使ってください。在庫表は、商品名・現在の在庫数・発注点・リードタイム・(あれば)直近の売れ数を並べて「入力素材」に貼り付けます。
# 役割
あなたはECの在庫管理を手伝うアシスタントです。渡された在庫データを読み、
発注を検討すべき商品と、動きが止まっている商品を仕分けして「アラート案」を作ります。
発注するかどうかの最終判断は人が行うので、あなたは「気づき」を出す役に徹します。
# 入力素材
- 判定の考え方:現在の在庫数が「発注点」以下、または近く下回りそうな商品を「発注候補」とする
- 動きが止まっている目安:(例:直近30日で1個も売れていない商品を「様子見候補」とする)
- 在庫データ(商品名/現在の在庫数/発注点/リードタイム日数/直近30日の売れ数):
(ここに表を貼り付け。例)
・商品A / 在庫8 / 発注点10 / 7日 / 直近42個
・商品B / 在庫120 / 発注点15 / 5日 / 直近0個
・商品C / 在庫14 / 発注点12 / 10日 / 直近20個
# やってほしいこと
1. 「発注候補」「もうすぐ発注候補」「様子見候補(動きが鈍い)」の3つに仕分ける
2. それぞれの商品について、なぜそう判断したかを一言そえる(例:発注点を下回っている 等)
3. 人が最終確認すべき点を「確認リスト」として3〜5点挙げる
(季節・イベント予定/販売終了や入れ替え予定/仕入れの最低ロットや納期/在庫数のズレ など)
# 出力条件
- まず仕分けの一覧(商品名・区分・理由)、次に「確認リスト」の順で示す
- 発注する数量は断定せず、必要なら「目安」と明記する
- 入力データにない売れ行きや予定を推測で書き加えない
# 禁止
- 「必ず発注すべき」など、人の判断を飛ばす断定をしない
- 入力にない在庫数・売上・イベントを事実のように書かない
- 販売終了や季節性など、データから読み取れない事情を勝手に決めつけない
# 禁止と「確認リスト」が効きます。AIは気を利かせて「これは発注すべきです」と言い切りたがるので、判断ではなく気づきを出す役だと先に釘を刺し、最後に人が確認する箇所を明示させると、アラートとして安心して使えます。表計算ソフト上で同じことをしたいときは、在庫表をそのまま読ませられるGoogleスプレッドシートのヘルプなどの機能も便利です。社内での使い方を整えるなら生成AIをEC業務に安全に使う社内ルール作りも参考にしてください。
あなたへの影響
- 在庫の発注が、毎日全部をにらむ作業から、AIが挙げた候補を確認する作業に変わります。見落としが減り、欠品による売り逃しと、過剰在庫で現金が寝る状態を、両方いっぺんに減らせます。
- 「気づいたら在庫切れ」「気づいたら山積み」という後手の在庫管理を、先に知らせてもらう先手に切り替えられます。まず10商品から小さくテストできます。
- 一方で、AIのアラートを鵜呑みにして発注すると、季節や入れ替えを無視した仕入れになるリスクは残ります。発注点やリードタイムの前提を先に決め、最終判断は人が下す——この線引きをチームで共有しておきましょう。
- アラートの精度は、元の在庫データの正しさ次第です。棚卸しのズレを放置すると、AIも間違えます。数字を合わせる習慣は棚卸しと在庫ロスを減らす管理もあわせてどうぞ。
明日やること
- まずよく売れる10商品を選び、在庫表に「現在の在庫数」「直近30日の売れ数」の列があるか確認する。
- 商品ごとに発注点(1日に売れるおよその数 × 届くまでの日数 + 少しの余裕)をざっくり計算し、在庫表に1列足す。
- 上の「コピペで使えるプロンプト」に在庫表を貼り付け、AIに「発注候補・様子見候補・確認リスト」を出してもらう。
- AIの候補を、季節・入れ替え・最低ロット・在庫のズレの観点で人が確認し、実際に発注する商品と数を決める。
- 1週間ほど回してみて、アラートが早すぎ/遅すぎなら、発注点やリードタイムの数字を微調整する。
- 手応えが出たら、対象商品を少しずつ広げる(次は動きの鈍い商品の「様子見」判定も活用する)。
在庫の発注は、一度で完璧に自動化できる魔法ではありません。でも、ものさしを決めてAIに見張ってもらい、最後は人が現場の事情を上乗せして決める。その小さな輪を回すうちに、「また切らしてた」「また余らせた」という後悔は、少しずつ「そろそろ発注どきだな」という落ち着いた先読みに変わっていきます。今日はまず、いちばん切らしたくない売れ筋を10個、書き出すところから始めてみませんか。

チェックリスト
- まず売れ筋10商品ほどに絞ってアラートを試す
- 商品ごとに発注点(届くまでの日数+余裕を織り込む)を決めた
- リードタイム(発注から到着までの日数)をアラートに反映した
- AIには「発注すべき」と断定させず、候補と理由を出させた
- 季節・イベント・販売終了/入れ替え予定を人が確認した
- 仕入れの最低ロットや納期を踏まえて発注数を決めた
- 元の在庫数が実際と合っているか(棚卸しのズレ)を確認した
- 発注ボタンを押す最終判断は人が行う運用にした
関連テンプレート・無料ツール
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- ▶ AIで需要予測・在庫と価格を最適化する
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- ▶ EC担当者のチェックリスト50
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