パソコンの前で、似た商品の価格が書かれた小さな札がやわらかく並ぶ様子を見ながら、自分の商品の値段を考えているEC担当者

AIで競合の価格を調べる|EC値付けの参考にする方法

新しい商品を仕入れて、いよいよ値段をつける段になって、ふと手が止まる。「高すぎて売れなかったらどうしよう」「でも安すぎたら、利益がほとんど残らない」。そうやって、似た商品を売っている他店のページをいくつも開いては、電卓とにらめっこ——気づけば夕方、なんてこと、ありませんか。

値付けは、EC運営でいちばん気を使う仕事のひとつです。ひとつずつ他店を見て回るのは時間がかかるし、見落としも出ます。今日は、その「似た商品がいくらで売られているか」を調べて整理する下ごしらえを、AIに手伝ってもらう最初の一歩をたどります。高価なツールの話ではありません。手元に商品情報と対話型AI(ChatGPTなどの生成AI)があれば、今日から小さく試せる範囲の話です。読み終えるころには「まずはこの1商品でやってみよう」と思えるはずです。

結論:AIは、似た商品の価格帯を整理したり、値付けの考え方を一緒に組み立てたりする「値付けの下ごしらえ」に使えます。ねらいは、他店を1件ずつ見て回る手間を減らし、根拠のあるたたき台を早く作ること。ただし2つ、外してはいけない前提があります。ひとつは、AIが出す価格や他店名は事実とは限らないこと(後述するように、AIはもっともらしい誤りを混ぜることがあります)。だから最終的な数字は、公式サイトや実際の販売ページで自分の目で確かめる。もうひとつは、安さだけで決めないこと。値付けは原価と利益から積み上げるのが基本で、他店の価格はあくまで「参考のひとつ」です。まずは売れ筋1商品で、AIに価格帯を整理してもらうところから始めましょう。

いま現場で何が起きているか|値付けの悩みとAIの登場

原価と利益から決めた自店の値段を土台に、AIが整理した他店の価格帯を横に置いて、最後に人が値段を決める流れの図
原価と利益で土台を作る→AIに他店の価格帯を整理してもらう→事実を確かめて人が最終決定。AIは調べ役・整理役。

これまで競合の価格調べというと、検索して他店のページを一つずつ開き、価格をメモ帳や表計算ソフトに書き写す——という地道な作業でした。商品数が多いほど時間がかかり、途中で「もういいや」と数件だけ見て決めてしまいがちです。そうすると、たまたま見た店が高かった/安かっただけで、相場(世の中でだいたいいくらで売られているかの水準)を見誤ることも起こります。

ここ数年で変わったのは、対話型AIに「この商品と似たものは、だいたいどれくらいの価格帯で売られていますか」と聞けば、価格帯の目安や、価格を左右する要素を数分で整理してくれるようになったことです。「容量が大きいものは高め」「無香料タイプは少し安い傾向」といった、値段の差がどこから来るのかの仮説まで一緒に出してくれます。ひとつずつ調べていた下ごしらえを、まとめて手伝ってもらえる時代になりました。競合の強み・弱みを幅広く整理したいときはAIで競合分析・市場リサーチを高速化するも合わせて読むと、価格以外の切り口も見えてきます。

一方で、注意点もはっきりしています。AIは、事実と違うことをもっともらしく答えてしまうことがあります。これをハルシネーション(AIが実在しない情報を、本当のように作り出してしまう現象)と呼びます。「A社が1,980円で売っています」とAIが言っても、その価格や店名が実在するとは限りません。ですからAIの答えはあくまで“あたり”をつけるための下書き。実際の数字は、必ず公式サイトや販売ページで確かめる必要があります。この確かめ方の考え方は生成AIのハルシネーション対策|情報の正確性を保つでも詳しく触れています。

そしてもうひとつ大切なのが、値付けは他店合わせではなく、自店の原価と利益が土台だということ。相場を知るのは「自店の価格が浮いていないか」を確かめるためで、相場に引っ張られて赤字ぎりぎりまで下げるのは本末転倒です。原価と利益の積み上げ方はEC担当者のための利益率・原価管理入門で基本を押さえておくと、AIの出した価格帯に振り回されずにすみます。

具体例:売れ筋1商品の価格帯をAIで整理する

大がかりな準備は要りません。自分の商品の情報を整えて、対話型AIに渡すだけです。

① 自分の商品情報を書き出す

まず、価格を考えたい商品について、AIに伝える材料を用意します。商品名だけだと似た別物と混ざるので、特徴を具体的に書くのがコツです。

商品名:オーガニック保湿クリーム/容量50g/無香料
特徴:敏感肌向け・国産・詰め替えなし
想定のお客さん:30〜40代・肌の乾燥が気になる人
自店の原価:1,200円/かけたい粗利:50%以上

② AIに「価格帯の整理」を頼む

集めた情報を貼り付けて、後半の「コピペで使えるプロンプト」の形で頼みます。AIは「このタイプの商品は、だいたい○円〜○円の価格帯が多い」「高いものは△△が違う」といった形で、価格帯の目安と差の理由を整理してくれます。ここで出てくる具体的な店名や価格はまだ確定情報ではない、と心に留めておきます。

③ 事実を自分の目で確かめる

ここが省けない工程です。AIが挙げた価格帯や商品を手がかりに、実際に検索して販売ページで本当の価格を確認します。3〜5件も実際の価格を見れば、相場の幅が体感でつかめます。他店の商品説明をそのままコピーして使うのは著作権の問題があるので、あくまで「価格や仕様を参考にする」にとどめます。

④ 原価と利益に照らして自店の価格を決める

最後は人の出番です。確かめた相場の幅を横目に見つつ、自店の原価とかけたい粗利(売上から原価を引いた儲けの割合)から価格を組み立てます。「相場の真ん中より少し上でも、送料無料や手厚いサポートで納得してもらえるか」といった、価格以外の価値も一緒に考えます。値段の“見せ方”で印象は変わるので、価格の見せ方|参考価格・送料込み表示の工夫も参考になります。

コピペで使えるプロンプト

そのままコピーして、( )の部分を自店の内容に置き換えて使ってください。①で書き出した商品情報を貼り付けます。

# 役割
あなたはEC運営の値付けをサポートするアシスタントです。

# 入力素材
- 商品名:(例:オーガニック保湿クリーム 50g 無香料)
- 商品の特徴:(例:敏感肌向け・国産・詰め替えなし など)
- 想定のお客さん:(例:30〜40代・肌の乾燥が気になる人)
- 販売する場所:(例:自社サイト/楽天/Amazon など)
- 自店の原価とかけたい粗利:(例:原価1,200円/粗利50%以上)

# やってほしいこと
1. この商品と似たタイプの商品が、一般的にどれくらいの価格帯で売られているかの目安を「安い〜高い」の幅で示す
2. 価格の差が生まれる要素(容量・成分・ブランド・付属品など)を3〜5点、素人にも分かる言葉で
3. 上記を踏まえた自店の値付けの考え方を、「安め・中間・高め」の3案で、それぞれのねらいと向くお客さんとあわせて
4. 値付けで見落としがちな注意点を2点

# 出力条件
- 表と箇条書きを使い、全体で600字程度に収める
- 専門用語には短い言い換えを添える
- 具体的な店名や価格を挙げる場合は「要確認の推定」と明記する

# 禁止
- 実在するか分からない店名・価格を、事実であるかのように断定しない
- 他店の商品説明文をそのまま転載しない
- 「絶対に売れる」「必ず最安」などの断定・誇大な表現を使わない
- 根拠のない極端な安値をすすめない

# 禁止の最初の1行がとくに効きます。AIは気を利かせて“それっぽい店名と価格”を並べがちなので、「実在するか分からないものは断定しない」と先に釘を刺すと、下書きとして安心して使えます。プロンプトを社内で共有・使い回すときのルール作りは生成AIをEC業務に安全に使う社内ルール作りが参考になります。

あなたへの影響

明日やること

  1. 値付けに迷っている商品を1つ選び、①の形で商品名・特徴・想定のお客さん・原価とかけたい粗利を書き出す。
  2. 上の「コピペで使えるプロンプト」に貼り付けて、対話型AIに価格帯の目安と3つの値付け案を出してもらう。
  3. AIが挙げた価格や似た商品を手がかりに、実際の販売ページで本当の価格を3〜5件確認する。
  4. 確かめた相場の幅と、自店の原価・かけたい粗利を照らし合わせて、自店の価格を決める。
  5. 決めた価格でしばらく売ってみて、売れ行きを見ながら微調整する。1回で正解を当てるより、試して直す輪を回すほうが、結局いちばん早く“ちょうどいい価格”に近づきます。

値付けは、一度で正解が出る計算問題ではありません。でも、AIに相場の下ごしらえを手伝ってもらい、事実を自分の目で確かめ、原価と利益から決めて、売れ行きを見て直す。その小さな輪を回すうちに、「この価格で合ってるのかな」というひとりぼっちの不安は、少しずつ「根拠を持って決められた」という手応えに変わっていきます。まずは1商品から、始めてみましょう。

自分で納得して値札をつけ終え、ほっとした前向きな表情で次の仕事に向かうEC担当者の明るい情景
相場を知り、事実を確かめ、原価と利益から決める。その輪が「納得できる価格」への近道になる。

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