
AIで競合分析・市場リサーチを速くする|EC担当の始め方
新商品を出す前に、競合店のページをいくつも開いてみた。価格、送料、レビュー、写真の見せ方——どれも気になるのに、タブを閉じるころには「で、うちは何を変えればいいんだっけ」と振り出しに戻ってしまう。 気づけば夕方。比べたはずなのに、手元には何も残っていない——。
その堂々めぐり、実は「比べ方」を少し変えるだけで抜け出せます。今日は、競合分析と市場リサーチのいちばん時間のかかる部分をAIに「整理役」として手伝ってもらい、「うちが次に変える1つ」が見えてくるところまでを、専門用語に飲み込まれないように一緒にたどります。読み終えるころには、「これなら今週ひとつ試せそう」と思えるはずです。
結論:競合分析は「全部を眺める」から「観点を決めて並べる」に変えると一気に進みます。価格・送料・強み・レビューの傾向といった比べる軸を先に決め、各社の情報をその軸でAIに表に整理してもらうと、人が何時間もかけていた仕分けが数分で「見える形」になります。
大事なのは、AIに判断を丸投げしないこと。AIは「整理役」、何を真似て何で差をつけるかを決めるのは人です。まずは競合3社ぶんの情報を貼り付けて表にまとめてもらう、小さな一歩から始めるのが現実的です。
競合分析・市場リサーチとは何か
競合分析とは、同じジャンルで戦っているお店を観察し、「お客様から見て何が違うのか」を言葉にする作業です。市場リサーチは、もう少し広く「この商品ジャンルで今どんな需要や動きがあるか」を知ること。どちらも、自分のお店の立ち位置を決めるための土台になります。
難しいのは、情報そのものではなく整理です。競合のページを見れば、価格も送料もレビューも書いてある。けれど5社ぶん見比べようとすると、頭の中だけでは保持しきれず、「なんとなく向こうの方が安い気がする」で止まってしまいます。点は集まるのに、線にならない——ここが、いちばん時間を溶かすところです。
ここでAIが得意なのが、バラバラの情報を、決めた観点ごとに並べ直すこと。各社の「価格・送料無料ライン・主な強み・レビューでよく褒められている点」を渡せば、数分で比較表の下書きにまとめてくれます。人が3時間かける仕分けを肩代わりしてくれる相棒、という距離感がちょうどいい使い方です。
ひとつ前提を置いておきます。AIがまとめた表は「下書き」であって「結論」ではありません。どこを真似て、どこで差別化するかという判断は、商品とお客様を知る人の仕事。AIは時間のかかる整理を引き受けてくれる、と捉えておきましょう。
いま現場で何が起きているか

多くのEC現場では、競合チェックが「見て終わり」になっています。
- 気になる競合のページを開いては、なんとなく眺めて閉じる。
- 「安いな」「写真がきれいだな」という印象は残るが、メモには残らない。
- 数か月後、また同じ競合を一から見直すことになる。
情報を集める入口はいくらでもあるのに、比べる軸が決まっていないために、印象どまりで終わってしまうのです。これは珍しいことではありません。
一方で、生成AIの広がりで状況は変わりつつあります。各社のページから拾った情報をまとめて渡せば、AIが「価格帯」「送料・配送条件」「訴求している強み」「レビューの傾向」といった観点で表に整え、「各社の違いはここ」「自店が弱い観点はここ」まで下書きしてくれます。これまで後回しになりがちだった整理の、いちばん重い部分を任せられるようになりました。
ただし注意したいのは、AIは便利でも万能ではないこと。手元に渡していない情報は当然わかりませんし、ネット上の古い情報や思い込みを、それらしくまとめてしまうこともあります。だからこそ、情報の出どころは自分で確かめる前提を崩さないことが大切です。
具体例:競合3社をAIで比較表にする
特別なツールがなくても、競合ページと対話型AIがあれば今日から試せます。流れはシンプルです。
① 比べる軸を3〜5個、先に決める
いきなり集め始める前に、「何を比べたいか」を決めます。EC定番の軸はこのあたりです。
- 価格帯(最安・主力商品の価格)
- 送料・送料無料ライン
- 主な訴求(強み・キャッチコピーで何を推しているか)
- レビューでよく褒められている点/不満が多い点
- 商品ページの作り(写真の枚数、サイズ表記、保証など)
軸を先に決めるだけで、ページの見方が「眺める」から「探す」に変わります。
② 各社の情報を、その軸で書き出す
競合3社ぶん、決めた軸に沿って事実をメモします。ここで集めるのは、公開ページに書かれている事実だけ。価格や送料、書いてある訴求、レビューの傾向などを、見たまま箇条書きにします。
一点、現場の作法として。競合の文章や画像をそのままコピーして自店に使うのは著作権の問題になります。リサーチで参考にするのは構いませんが、転載はしないこと。比べるのは「考え方」であって、文章そのものではありません。
③ AIに「比較表の下書き」をお願いする
集めたメモを貼り付けて、こんな形で頼みます。プロンプト(指示文)の例です。
あなたはEC運営のリサーチ担当です。以下はA社・B社・C社と自店の情報です。
次の形で整理してください。
1. 「価格/送料/主な訴求/レビューの傾向」を列にした比較表
2. 各社の違いがはっきり出ている観点を3つ
3. 自店が弱そうな観点と、強そうな観点を1つずつ
※貼り付けた情報だけを根拠にし、推測で事実を足さないでください。
情報が無い項目は「記載なし」と書いてください。
【各社の情報】
(ここに軸ごとのメモを貼り付け)
「※推測で事実を足さない」「無い項目は記載なし」の一文が地味に効きます。AIは気を利かせて“それっぽい数字や強み”を埋めがちなので、渡した情報だけを根拠にするよう釘を刺すわけです。
④ 出てきた表を人の目で確かめ、1つ選ぶ
AIは「送料無料ラインはA社が最も低い」「レビューではB社の梱包が褒められている」といった形で表を返してくれます。ここで大切なのが、鵜呑みにせず、次の一手を1つだけ選ぶこと。
- 表の数字や記述が、元のメモと食い違っていないか確認する。
- 「真似るべき強み」と「自店ならではの差別化」を分けて考える。全部を真似ても埋もれるだけです。
- いちばん簡単に、かつ効きそうな改善を1つ選ぶ(例:送料無料ラインの見直し、商品写真の追加、サイズ表記の改善)。
この一手間で、AIの表は「使える材料」に変わります。
あなたへの影響
- 開いては閉じるだけだった競合チェックが、「うちは何が違うか」が見える材料に変わります。改善の優先順位を、印象ではなく事実の比較で決められます。
- 比べる軸が残るので、次回のリサーチが速くなる。同じ軸で各社を見直すだけで、変化にも気づけます。
- 自店の強み・弱みが言葉になり、商品ページのキャッチコピーや、推すポイントに活かせるようになります。
- 一方で、AIのまとめを鵜呑みにすると判断を誤るリスクもあります。AIが出した「最安」「最多」は、あくまで渡した情報の中での話。事実かどうかは元ページで確かめる前提を、チームで共有しておきましょう。
明日やること
- まず比べる軸を3〜5個決める(価格・送料・訴求・レビュー傾向など)。1ジャンル・主力商品ぶんで十分です。
- 競合3社ぶんの公開情報を、その軸に沿って箇条書きにする(転載はせず、事実だけメモ)。
- 自店ぶんも同じ軸で書き出し、上の例文でAIに比較表の下書きを頼む。
- 出てきた表を元メモと照らし、いちばん簡単に効きそうな改善を1つ選んで、今週中に試す。次の月に数字(CVRや問い合わせ)が動いたか軽く見比べれば、リサーチが改善のループになります。
競合ページは、開いて眺めるだけならただのタブの山です。でも、軸を決めてAIに並べてもらい、ひとつ拾い上げて、ひとつ変えてみる。それを繰り返すだけで、「なんとなく似たお店」から「ここが違うお店」へ、少しずつ近づいていきます。今日は軸を3つ決めるところから始めてみましょう。

チェックリスト
- 比べる軸を3〜5個(価格・送料・訴求・レビュー傾向など)先に決めた
- 競合3社ぶんの公開情報を、軸に沿って事実だけメモした(転載はしない)
- 自店ぶんも同じ軸で書き出した
- 「推測で事実を足さない・無い項目は記載なし」とプロンプトで指示した
- AIが出した表を、元メモと照らし合わせて確かめた
- 「真似る強み」と「差をつける点」を分けて考えた
- いちばん効きそうな改善を1つ決めて、今週中に試す段取りをした
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