スマートフォンのホーム画面にあるお店の会員アプリのアイコンを見て「そういえば、あのお店また見てみよう」と思い出し、うれしそうに開こうとしているお客さんの情景

会員アプリ・デジタル会員証でリピートを増やす設計|通知と特典の使い方

「会員アプリ、いちおう用意したんです。でも、通知を送るとブロックされそうで、結局ほとんど何も送れていなくて」——そんな声をよく聞きます。せっかくお客さんのスマホに入れてもらったのに、そのまま忘れられていく。かといって、お知らせを立て続けに送れば「うるさい」と消されてしまう。この、送りすぎても送らなさすぎてもダメな距離感に、悩んでいませんか。

でも、思い出してみてください。近所のよく行くお店を「また行こう」と思うのは、しつこく呼び込まれたからではなく、ふとしたときに思い出せるからですよね。会員アプリやデジタル会員証も同じです。ホーム画面にそっと居場所を持ち、必要なときだけ声をかける。それができれば、忘れられずに「また来よう」と思ってもらえます。今日は、お客さんに嫌われずにリピート(もう一度買ってもらうこと)を増やす、通知と特典の設計を一緒に見ていきましょう。

結論:会員アプリ・デジタル会員証(スマホの中に持てる会員証や、お店のミニアプリ)がリピートにつながるかは、(1)入れておく理由(特典・便利さ)をはっきりさせる、(2)プッシュ通知(アプリからスマホに届くお知らせ)を"用があるときだけ"に絞る、(3)会員証を「思い出す→また来る」の入り口にする——この3つで決まります。コツは、通知を「お店が言いたいこと」ではなく「お客さんが受け取ってうれしいこと」だけに絞ること。まずは大がかりな専用アプリを作り込む前に、いま使っている仕組み(スマホ会員証やLINEのミニアプリなど)で、特典を1つと、月数回の意味ある通知から始めます。狙うのは、来店頻度(お客さんがお店を訪れる回数)を少しずつ上げて、LTV(一人のお客さんが長く買ってくれる金額の合計)を伸ばすことです。

いま何が起きているか|アプリは「入れてもらった後」で差がつく

メールは開かれずに埋もれ、LINEも登録直後がピークで、だんだん読まれなくなる。多くのお店が、お客さんとの接点をどう保つかに頭を悩ませています。そんな中で会員アプリ・デジタル会員証が注目されるのは、スマホのホーム画面に居場所を持てるからです。アイコンが目に入るだけで「そういえば、あのお店」と思い出してもらえる。これは、他のチャネル(連絡の経路)にはない強みです。

ただし、勘違いしやすい点があります。それは、アプリは「入れてもらうこと」がゴールではなく、「入れてもらった後」で差がつくということ。インストールしてもらっても、使う理由がなければアイコンは埋もれ、やがて削除されます。逆に、あれこれ通知を送りすぎると、お客さんは通知をオフにするか、アプリそのものを消してしまう。一度ブロックされたり削除されたりすると、取り戻すのはとても難しい。

ここで大事なのが、プッシュ通知は「お店の権利」ではなく「お客さんが貸してくれた場所」だという考え方です。ホーム画面もロック画面も、お客さんの持ち物。そこに割り込ませてもらっている以上、送るのは「受け取ってよかった」と思える内容に限る。この節度が、忘れられず・嫌われずの関係を保つ土台になります。なお、最初から専用アプリを自作するのはコストも運用の手間も大きいので、まずはスマホ会員証やモール・SNSが用意するミニアプリなど、小さく始められる仕組みから試すのがおすすめです。

具体例|「理由・通知・来店」の3点で設計する

会員アプリでリピートを増やす3つの柱(入れる理由・通知・来店のきっかけ)が順につながって回っていくことを示した概念図
「理由」でホーム画面に居場所を持ち、「通知」で用があるときだけ声をかけ、「来店」につなげる。この3つが回るとリピートになる。

やることは、次の3点を順に整えるだけです。主力のお客さん層を思い浮かべながら、できるところから試してみてください。

①入れておく理由|「便利」か「お得」か、片方でいいから明確に まず、お客さんが「消さずに置いておこう」と思う理由を用意します。理由は大きく2つの方向があります。

大事なのは、どちらか片方でいいので「入れておくと自分が得する・楽になる」と一言で言えることです。「うちのアプリは、ポイント残高がいつでも見られて、たまに限定クーポンが届きます」——このくらい端的だと、お客さんも入れておく意味を感じられます。会員登録そのものの動機づけはECの会員登録を増やす|特典と導線でリピートにつなげる設計、特典の中身の組み方は会員ランク・ポイント制度の設計が参考になります。

②プッシュ通知|「3種類」に絞り、用があるときだけ送る 次に、いちばん気をつかうプッシュ通知です。ここは「送る種類」を最初から絞っておくと、送りすぎを防げます。届いてうれしい通知は、だいたい次の3種類に収まります。

コツは、「お店が言いたいこと」ではなく「お客さんが受け取ってうれしいこと」だけを送ること。とくにお得系を毎日のように送ると、通知オフやアンインストールの一番の原因になります。目安として、一人ひとりに用がある「お知らせ系」を中心にしつつ、全員向けの配信は送りすぎないよう控えめに。送る時間帯も、深夜や早朝は避けます。配信の頻度や時間の考え方はメルマガ・LINEの配信頻度と曜日/時間の決め方、お客さんに合わせた出し分けはLINEセグメント配信でリピートを増やすと地続きです。

③来店のきっかけ|「思い出す→また来る」の一歩を用意する 最後に、アプリを開いてもらった後に「また買おう」へつなげます。ポイントやスタンプの残高が見えると「もう少しで次の特典だ」と来店の動機になりますし、失効前のひと声は再訪のきっかけになります。ポイントの期限設計はポイント有効期限・失効設計で再来店を促すがそのまま使えます。アプリを開いた先が行き止まりにならないよう、「あなたへのおすすめ」や再注文ボタンなど、次の一歩をすぐ押せる導線を置いておきましょう。

やりがちなNGと、その直し方(景品表示法・個人情報の観点)
・通知を送りすぎる:お得系を連投してブロック・削除される。→ 一人ひとりに用がある「お知らせ系」を中心にし、全員配信は控えめに。
・限定・特別を根拠なく言い切る:「アプリ限定・最安値」など根拠のない最上級や、実際に売っていない価格と比べる二重価格は、景品表示法(有利誤認など)の観点で問題になりえます。→ クーポンや「◯円お得」を見せるなら、根拠のある価格・条件で。
・同意なく通知や情報取得を進める:アプリで個人情報や購買履歴を扱う以上、何のために使うかを分かりやすく示し、通知の受け取りはお客さんが選べるようにします。→ 通知オン・オフの切り替えを分かりやすく用意する。
・入れてもらう理由がない:便利でもお得でもないアプリは消される。→ 「入れておくとこう得する・楽になる」を一言で言えるように。

クーポンや割引の見せ方については消費者庁|景品表示法(表示規制の概要)、アプリで個人情報を扱うときの基本的な考え方は個人情報保護委員会の情報もあわせて確認しておくと安心です(ここで挙げた頻度や金額はすべて例で、実際の効果を保証するものではありません)。

あなたへの影響

明日やること

  1. お客さんがアプリ・会員証を入れておく理由を、「便利さ」か「お得さ」のどちらかで一言に書き出す(例:ポイント残高が見える+限定クーポン)。
  2. 送るプッシュ通知を「お知らせ系/役立ち系/お得系」の3種類に整理し、それぞれ「どんなときに送るか」を決める。
  3. 全員向けの配信は月に何回までかの上限を先に決める。深夜・早朝を避ける時間帯のルールも合わせて決めておく。
  4. 通知の受け取りをお客さんがオン・オフできるか、個人情報を何のために使うかが分かりやすく示せているかを確認する。
  5. ポイントやスタンプの残高・失効日が見えるようにし、失効前のひと声通知を用意する。
  6. アプリを開いた先に、再注文やおすすめなど「次の一歩」の導線があるかを確認する。数週間、通知の反応と再訪の変化を見て、送り方を調整する。

会員アプリ・デジタル会員証チェックリスト

会員アプリやデジタル会員証は、お客さんを囲い込むための道具ではありません。それは、「困ったときや、ちょっと得したいとき、いつでもここにいますよ」と、スマホの中にそっと置いておく小さな目印です。しつこく呼び込まなくていい。ただ、思い出してもらえる場所に、迷惑にならない距離で居続ける。まずは「入れておく理由」を一言にして、通知を3種類に絞るところから。その一歩が、一度きりのお客さんを、また会える人へと変えていきます。

お店の担当者が、アプリを通じて何度も来てくれるようになったお客さんとのつながりを感じて、あたたかい笑顔になっている明るい情景

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参考(公式・一次情報)