
食品ECの賞味期限・ロット管理|先入れ先出しでロスと出荷ミスを防ぐ
棚を整理していたら、奥のほうから賞味期限が数日過ぎた在庫がまとまって出てきた——。仕入れたことすら忘れていて、結局そのまま廃棄。あるいは、お客さんから「届いた商品の期限が思ったより近かった」と連絡が来て、ひやりとした。食品やサプリ、化粧品などを扱っている方なら、心当たりのある場面ではないでしょうか。
これは、あなたの管理がずぼらだから起きるわけではありません。期限のある商品は、置き方とデータの持ち方を決めておかないと、必ずどこかで古いものが奥に取り残される——それだけのことです。逆に言えば、仕組みさえ作れば、廃棄も「期限切れ間近の商品を送ってしまう」出荷ミスも、大きく減らせます。今日は、賞味期限とロットを見える化し、古いものから先に出す「先入れ先出し」を、棚とデータの両方で回す方法を、今日から手をつけられる順番で一緒に整理していきましょう。
結論:期限のある在庫のロスと出荷ミスは、「気をつける」では防げません。防ぐのは、(1)期限とロットを記録して見える化し、(2)古いものが必ず手前に来る置き方=先入れ先出しを棚で徹底し、(3)出荷時に期限を確かめる関所を1つ置くという仕組みです。
先入れ先出し(さきいれさきだし。英語の頭文字でFIFOとも呼ばれ、先に入れたものから先に出すこと)と、ロット(同じ時期に作られた・仕入れた商品のまとまり。多くは製造ロット番号で管理する)の考え方さえ押さえれば、特別なシステムがなくても今日から始められます。まずは一番回転の遅い、期限の短い商品1つから手をつけるのが近道です。
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いま何が起きているか|「古いものが奥に残る」のは、置き方の問題
期限のある商材でのトラブルは、いくつかの型に分かれます。まずは「自分の店で起きているのはどれか」を思い浮かべながら読んでみてください。
- 期限切れの廃棄:仕入れたのに売り切れず、賞味期限(品質が保たれ、おいしく食べられる目安の期限)や消費期限(安全に食べられる期限で、過ぎたら食べない方がよいもの)が過ぎて捨てることになる。仕入れ値がそのまま損になる。
- 期限切れ間近の出荷:棚から適当に取って出荷した結果、期限が数日〜数週間しか残っていない商品がお客さんに届き、クレームや低評価につながる。
- 古いロットが奥に取り残される:新しく入荷した商品を手前にどんどん置くため、古いロットが奥に埋もれ、気づいたときには期限切れ。新しいものから先に出てしまう逆転が起きる。
- リコール・自主回収時に追えない:ある製造ロットに問題が見つかっても、「どのロットを・誰に・いつ売ったか」が記録されておらず、回収の連絡先が特定できない。
これらに共通する原因は、たった一つ。期限とロットが「見えていない」こと、そして古いものが自然に手前へ来る置き方になっていないことです。段ボールに入荷日も期限も書かれていない。棚に決まった置き場がなく、空いたところに突っ込む。出荷のとき、期限を確かめる手順がない——。この状態だと、ベテランの勘に頼るしかなく、忙しい日ほど古い在庫が取り残されます。
ここで大事な考え方を一つ。期限管理は、単に「廃棄を減らす」ためだけの話ではありません。食品を扱う以上、どのロットを誰にいつ販売したかをたどれる状態=トレーサビリティ(生産・流通の履歴を追える仕組み)は、万一の自主回収のときに、お客さんの安全と店の信用を守る土台になります。商品の期限表示そのものには消費者庁「食品表示」のルールがありますが、その表示された期限を現場で正しく回すのが、今日の話の中心です。
もう一つ。期限切れで廃棄した在庫は、そのまま在庫ロス(売れずに捨てる・値下げする分の損失)であり、決算で数える棚卸資産(会社が持っている売り物の在庫。国税庁「棚卸資産の評価の方法」にも関わる)の目減りでもあります。日々の期限・ロット管理は、利益とキャッシュを守る作業そのものなのです。
賞味期限・ロット管理を仕組みにする3ステップ|見える化して、先入れ先出しを回す

仕組みというと身構えますが、順番があります。いきなり全商品を完璧に管理しようとせず、期限が短くて回転の遅い商品から手をつけるのが失敗しないコツです。受け入れ(入荷検品・入庫)の標準化と同じ発想を、期限という切り口で効かせていきます。
ステップ1:期限とロットを「見える化」する
まずは、隠れている情報を表に出します。仕入れ値をかけて買った在庫の期限が分からない、という状態をなくすのが目的です。
- 入荷時に「入荷日・賞味/消費期限・ロット番号」を記録する:段ボールや商品マスタ(商品台帳)に、この3点をひも付けます。紙の在庫表でもスプレッドシートでも構いません。大事なのは「いつ入って、いつまでで、どのロットか」がひと目で分かること。
- 箱・棚に期限を大きく書く/貼る:奥から出てきて初めて期限を知る、をなくします。入荷時に期限をマジックで大きく書くだけでも、古い在庫の見落としが激減します。
- 「期限が近い在庫」の一覧を持つ:期限までの残り日数が短い順に並べた一覧(スプレッドシートの並べ替えで十分)を作ると、「次に売り切るべき商品」が毎朝はっきりします。これが値下げやセット販売など、売り切る打ち手の出発点になります。
期限管理は、扱う点数(SKU=色や容量違いを含めた商品管理の単位)が増えるほど頭では覚えきれません。まずは記録に落とすこと。ここが全ての土台です。
ステップ2:古いものが「手前に来る」置き方=先入れ先出しを棚で徹底する
見える化ができたら、古いものから自然に出ていく置き方を作ります。ここが今日の心臓部です。
- 奥から補充し、手前から出す:新しく入荷した在庫は棚の奥(または下)に入れ、出荷は必ず手前(または上)から取る。棚の置き方をこの一方向に固定すると、先入れ先出しが「気をつける」ではなく「自然にそうなる」状態になります。
- 同じ商品でも、期限・ロットで置き場を分ける:期限の違う同じ商品を一緒くたにしない。手前に古いロット、奥に新しいロット、と物理的に分けます。
- 棚番号(ロケーション=どの棚のどこに置くかの住所のような番号)と期限をひも付ける:どの棚のどこに、どのロットがあるかを決めておくと、出荷の人が迷わず「手前の古いロット」を取れます。
- 期限が近づいた在庫は「先に売り切る場所」へ:残りが少なくなった在庫は、目立つ棚や「早く出す」コーナーに移し、セットやおまけ、値下げで優先的に売り切ります。捨てる前に、売り切る導線を作るのが利益を守るコツです。
冷蔵・冷凍の商材なら、温度管理と合わせて設計する必要があります。庫内での置き方や配送は冷蔵・冷凍・クール便の物流設計と合わせて考えてください。
ステップ3:出荷時に期限を確かめる「関所」を1つ置く
置き方を整えても、出荷の瞬間に古い在庫を飛ばして新しいものを出してしまっては台無しです。出荷の前に、期限を確かめる関所を組み込みます。
- 出荷基準を決める:「残り期限が◯日を切った商品は通常出荷しない」「賞味期限まで最低◯分の1を残して出す」など、お客さんに届いてよい期限のラインを数字で決めます(ここでの日数はあくまで例。商材の期限の長さで調整してください)。
- ピッキング時に期限を確認する一手間:商品を棚から取るとき、期限表示を見て「手前の古いロットか」を確かめる。棚が先入れ先出しになっていれば、この確認はごく軽い手間で済みます。
- 販売時にロットを記録する(できる範囲で):どの注文に、どのロットを出したかを控えておくと、万一そのロットに問題が出たときに、連絡すべきお客さんをすぐ特定できます。全部が難しければ、まずは期限の短い主力商材だけでも。
- 入荷が増えたらバーコード・システムで支える:点数が増えて手作業が限界になったら、賞味期限・ロットで在庫を管理できる在庫管理システムやWMS(倉庫管理システム)、バーコードでの期限管理を検討します。ただし手順がないままツールだけ入れても効きません。ステップ1〜2の記録と置き方ができてから自動化に進むのが、遠回りに見えて一番速い道です。
具体例:期限切れ廃棄に悩んでいた食品ECが、ロスをほぼゼロにするまで
自家製のジャムやドレッシングなど、賞味期限が半年ほどの食品を自社サイトと1モールで売っているお店を考えてみましょう。人気商品は回転が速い一方、季節商品や新商品が売れ残り、毎月いくつかは期限切れで廃棄。しかも先日、期限が1か月を切った商品を送ってしまい、レビューで指摘されました。ここを順番に手当てすると、こう変わります。
- ステップ1(見える化):入荷時に「入荷日・賞味期限・ロット番号」をスプレッドシートに記録し、箱にも期限を大きく書くルールに。期限までの残り日数が短い順に並べた一覧を作ったところ、廃棄の大半が、回転の遅い3商品に集中していると判明。
- ステップ2(先入れ先出し):棚を「奥から補充・手前から出す」置き方に統一し、同じ商品でも期限で置き場を分けた。残り期限が短くなった在庫は、レジ横のような「早く出す」棚に移動。
- 売り切る導線:期限が近い3商品を、人気商品とのセット販売やメルマガの「まもなく終了」枠で優先的に告知。捨てる代わりに、値引き幅を抑えて売り切れるように。
- ステップ3(出荷の関所):「賞味期限まで残り2か月を切った商品は通常出荷しない(セット/告知で売り切る)」という出荷基準を決め、ピッキング時に期限を確認する一手間を追加。期限切れ間近の出荷が止まり、レビューの指摘も消えた。
結果、月に数件あった廃棄は月0〜1件に減り、廃棄していた分がそのまま利益に。ポイントは、いきなりシステム導入から入らなかったこと。まず記録と置き方という手作業のルールで「どの商品が・なぜ残るのか」を理解したから、後で在庫管理システムを入れても迷わず設定できたのです。まず一番痛い商品を手作業で押さえ、効果を確かめてから自動化へ——この順番が結局いちばん速く効きます。
あなたへの影響
- 期限とロットを見える化し、先入れ先出しを棚で徹底するだけで、期限切れの廃棄(在庫ロス)が大きく減り、仕入れ値がそのまま利益として残るようになる。
- 出荷時に期限を確かめる関所を置くことで、「期限が近い商品が届いた」というクレームや低評価が減る。お客さんの「安心して買える店」という信頼につながる。
- どのロットを誰に売ったかを控えておけば、万一の自主回収のときに連絡先をすぐ特定でき、お客さんの安全と店の信用を守れる。
- 期限が近い在庫の一覧があると、セット販売や告知で「捨てる前に売り切る」打ち手を先回りで打てる。値下げ一択に頼らず、利益を守りながら在庫を回せる。
- 記録と置き方という土台があるので、後から在庫管理システムやバーコード管理を入れるときも、設定と教育がスムーズで導入につまずきにくい。
明日やること
- 期限が短くて回転の遅い商品を1つ選ぶ(一番よく廃棄している商品でOK)。まずここから始める。
- その商品の在庫について、入荷日・賞味/消費期限・ロット番号をスプレッドシートか在庫表に書き出す。
- 段ボールや棚に、期限をマジックで大きく書く/貼る。奥から見えなくても分かる状態にする。
- 棚を「奥から補充・手前から出す」置き方に直す。同じ商品でも期限で置き場を分ける。
- 出荷基準(残り期限が◯日/◯分の1を切ったら通常出荷しない)を数字で決め、紙に書く。
- 期限が近い在庫を並べた一覧を作り、セット販売や告知で売り切る商品を1つ決める。
- 点数が増えて手作業が限界になったら、賞味期限・ロットで管理できる在庫管理システムやバーコードの導入を比較検討する。
賞味期限・ロット管理と先入れ先出し チェックリスト
- 入荷時に「入荷日・賞味/消費期限・ロット番号」を記録している
- 段ボールや棚に、期限が大きく見える形で書いて/貼ってある
- 期限までの残り日数が短い順に並べた一覧を持っている
- 棚が「奥から補充・手前から出す」置き方になっている(先入れ先出し)
- 同じ商品でも、期限・ロットで置き場を分けている
- 期限が近づいた在庫を「先に売り切る」場所・導線がある
- お客さんに届けてよい期限のライン(出荷基準)を数字で決めている
- 出荷(ピッキング)時に期限を確かめる一手間が入っている
- どのロットを売ったか、主力商材だけでも記録している(回収に備える)
- 点数が増えたときの在庫管理システム・バーコード管理の候補を挙げている
関連テンプレ:入荷から在庫、売り切りまで一本の線でつなぐ
賞味期限・ロット管理は、単体ではなく前後の工程とつなげると効果が何倍にもなります。まず、期限やロットを正しく記録する土台は、商品を受け入れる入口の精度で決まります。入荷検品・入庫の標準化ガイド|在庫のズレと欠品を防ぐ受け入れの仕組みで、入荷時の記録と棚入れを整えましょう。
そのうえで、そもそも期限内に売り切れる量だけを仕入れることが、廃棄を減らす最上流の対策です。発注点や適正在庫の考え方はEC在庫管理の基本|適正在庫と発注点で欠品と過剰在庫を防ぐを、季節商品の売り切り計画は季節商品の在庫リスクを抑える|売り切りと仕入れの決め方を。定期的な現物合わせで期限切れやロスを早く見つけるには棚卸しと在庫ロスを減らす管理|差異と廃棄をなくす基本が役立ちます。食品を扱う際の表示や許可のルールは食品のネット販売に必要な表示・許可の基本で確認してください。

棚の奥から古い在庫が出てくるたびに感じる、あの小さな罪悪感。「次から気をつけます」で終わらせると、必ずまた繰り返します。でも、期限が短い商品を1つ選び、期限を見える化して「奥から入れて手前から出す」に置き方を変えるだけで、明日からの在庫は今日より確かに回り始めます。買ってくれた人に、いちばんおいしい・新しい状態で届ける。それは在庫管理の話であると同時に、お客さんへの誠実さそのものです。今日はまず、一番よく捨てている商品の期限を、棚に大きく書くところから始めてみませんか。
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