
解約・離反したお客さんを呼び戻すウィンバック入門
顧客リストをながめていて、ふと気づく瞬間はありませんか。「この人、去年はよく買ってくれてたのに、最近ぱったり来てないな」。あるいは、定期購入を解約した通知を見て、少しさびしい気持ちになったこと。あなた自身も、昔よく使っていたお店を、特に理由もなく使わなくなった経験があるはずです。
離れてしまったお客さんは、もう二度と戻ってこない——そう決めつけてしまいがちです。でも、いちど「あなたのお店で買う」と決めてくれた人は、まったくの新規のお客さんより、ずっと近い場所にいます。今日は、離れてしまった人にもう一度そっと声をかけるウィンバックという考え方を、いっしょに整理していきましょう。
結論:ウィンバック(一度離れた・解約したお客さんに再び買ってもらうための働きかけ)は、「いつ離れたか」でお客さんを分け、離れて間もない層から、値引きではなく“思い出してもらう一言”で声をかけるのが基本です。新しいお客さんを一から集めるより、once(一度)買ってくれた人に戻ってもらうほうが、手間もコストも小さく済むことが多い。やることは、①離れたお客さんを「最終購入からの日数」で層に分ける、②離反したての層から順に声をかける、③理由をたずねつつ、戻る“きっかけ”を用意する、の3つ。いきなり大きな値引きに頼らず、まず「覚えていますよ」という気持ちを届けるところから始めます。
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いま何が起きているか|「離れた人」は放置されがち
多くのお店では、日々の関心が「新しいお客さんをどう集めるか」に向きがちです。広告を出し、SNSを更新し、初めての人に振り向いてもらう——ここに力を注ぐのは当然のこと。けれどそのぶん、一度買って、そのまま離れていった人は、リストの奥に眠ったまま放置されやすいのが実情です。
ここで区別しておきたいのが、「休眠」と「離反」の違いです。休眠は、特に理由もなく、なんとなく来なくなった状態。離反は、解約ボタンを押した、定期をやめた、といった“はっきり離れた”状態を指します。どちらも「今は買っていない人」ですが、離反したお客さんは一度「やめる」と自分で決めている分、声のかけ方に少し気配りが要ります。休眠のお客さん全般への声かけは休眠顧客の掘り起こし方にまとめているので、あわせて読んでみてください。
見落とされがちなのは、離れた理由の多くは「不満」ではなく「忘却」だという点です。「対応が悪かったから二度と買わない」と決めた人は、実はごく一部。多くは、引っ越しや生活の変化、単に別のお店を使ううちに、あなたのお店のことを思い出さなくなっただけです。だとすれば、必要なのは平謝りでも大安売りでもなく、「まだここにいますよ」とそっと思い出してもらう一言。ウィンバックは、この“忘れられている”状態に、もう一度そっと橋をかける施策なのです。
なお、離れたお客さんへメールやLINEで再び連絡するときは、特定電子メール法(総務省)などのルールに沿って、あらかじめ配信に同意をもらっている相手に、配信停止(オプトアウト)の導線を添えて送るのが基本です。「久しぶりだから」と、同意のない相手に急に送るのは避けましょう。
具体例|ウィンバックの「分け方・順番・声のかけ方」

やることはシンプルです。「離れた順に分けて、近い人から声をかける」だけ。3つのステップで見ていきましょう。
①分ける|「最終購入からの日数」で層をつくる まずは、離れたお客さんをひとまとめにせず、最後に買ってくれてからどれくらい経ったかで分けます。たとえば「離反したて(60〜90日)」「少し前(半年ほど)」「かなり前(1年以上)」の3層。離れて間もない人ほど、あなたのお店を覚えていて、戻ってくる可能性も高いものです。この「最終購入日・購入頻度・購入金額」でお客さんを分ける考え方はRFM分析でお客さんを分けて施策を変えるでも詳しく扱っています。
②順番をつける|離反したての層から声をかける いきなり全員に一斉送信するのではなく、戻ってきてもらいやすい「離反したて」の層から始めます。この層は、記憶も新しく、ちょっとしたきっかけで戻ってくれることが多い。まずここで手ごたえをつかんでから、「少し前」「かなり前」の層へと広げていきます。声をかける手段は、すぐ気づいてもらいたいならLINE、じっくり伝えたいならメール、と役割で選びましょう。使い分けはメールとLINE、役割で使い分ける設計が参考になります。
③きっかけを用意する|「思い出」と「戻る理由」をセットで 声のかけ方は、大きく3段階で考えると迷いません。
- 1通目(あいさつ):「お久しぶりです。その後、いかがお過ごしですか」と、まずは近況をうかがう気持ちで。売り込みは前面に出さない。
- 2通目(役立ち・お知らせ):新しくなったこと、季節のおすすめ、使い方のヒントなど、「戻ってみようかな」と思える情報を届ける。
- 3通目(背中を押す一言):ここで初めて、必要なら「お帰りなさいクーポン」など小さなきっかけを。値引きは最後の一手で十分です。
いきなり大きな割引から入ると、「安いときだけ買えばいい」と思われ、かえって定価では戻りにくくなります。まずは覚えていてもらうこと。クーポンを使う場合も、原資(値引きに使えるお金)を粗利から逆算し、クーポン・値引き設計と利益インパクトの考え方で無理のない範囲に。なお「特別価格」「〇〇円→〇〇円」といった見せ方をするときは、実際に売っていた価格を基準にするなど、景品表示法(消費者庁)に沿った表示を心がけましょう。
やりがちなNGと、その直し方
・全員にいきなり大幅値引き:安売り依存を招き、定価で戻りにくくなる。→ まずは「思い出してもらう一言」から。値引きは最後の一手に。
・離れた人をひとまとめに一斉送信:離反したての人にも遠い人にも同じ文面で刺さらない。→ 最終購入からの日数で層を分ける。
・同意のない相手に急に送る:不信感やクレームのもと。→ 配信同意のある相手に、配信停止の導線を添えて送る。
・「なぜ戻らないか」を一度も聞かない:改善のヒントを取りこぼす。→ 1通目でそっと近況や理由をうかがう。
ここで挙げた日数やクーポンはすべて例です。自店の購入サイクル(消耗品なら短く、家具など長く使うものなら長く)に合わせて置き換えてください。解約そのものを減らす“入口側”の工夫は定期購入の解約を減らす方法にまとめています。
あなたへの影響
- 離れた人が少しでも戻ってくれば、新規獲得より小さいコストで売上を積み増せます。一から集めるより、once(一度)買ってくれた人のほうが近い場所にいます。
- 「なぜ離れたのか」を聞くうちに、商品やサービスの改善のヒントが見つかります。ウィンバックは、売上だけでなく“お店を良くする声”も連れてきてくれます。
- 「離れても気にかけてくれるお店」という印象は、戻ってきた人の信頼(そして長く買い続けてくれる関係)につながります。一度戻った人は、二度目はもっと戻りやすくなります。
明日やること
- 顧客リストを開き、最終購入日が古い順に並べてみる。まずは「どれくらいの人が、いつから離れているか」を眺めるだけでOKです。
- 離れたお客さんを、「離反したて」「少し前」「かなり前」の3層にざっくり分ける。細かい線引きより、まず分けてみることが大事です。
- いちばん戻ってきてもらいやすい「離反したて」の層に向けて、売り込みを抑えた「お久しぶりです」の1通目を用意する。
- 送る前に、配信同意のある相手か、そして配信停止の導線があるかを確認する。ここは飛ばさないでください。
- 反応(開封・クリック・久しぶりの購入)を記録し、手ごたえを見てから次の層へ広げる。うまくいった文面は、次に活かします。
ウィンバック実行チェックリスト
- 離れたお客さんを「最終購入からの日数」で層に分けている
- 「離反したて」の層から優先して声をかけている
- 1通目は売り込みを抑え、「思い出してもらう」内容にしている
- 値引きは最後の一手にとどめ、いきなり大幅割引にしていない
- クーポンの原資を粗利から逆算し、無理のない範囲に収めている
- 配信同意のある相手に、配信停止(オプトアウト)の導線を添えて送っている
- 「特別価格」等の見せ方が、景品表示法に沿った表示になっている
- 反応を記録し、手ごたえを見てから次の層へ広げている
離れてしまったお客さんに声をかけるのは、少し勇気がいります。「もう迷惑かな」「忘れられているかも」と、送る手が止まることもあるでしょう。でも、あなたのお店を一度選んでくれた事実は消えません。大切なのは、値引きで振り向かせることではなく、「まだここで、あなたを待っています」という気持ちを、そっと届けること。今日はまず、いちばん近くにいる「離反したて」のお客さんへ、たった1通の「お久しぶりです」から始めてみませんか。その一言が、途切れかけたご縁を、もう一度つないでくれるかもしれません。

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