スマホでどこを見ても同じ商品の広告が追いかけてきて、少しうんざりしている買い物客と、それを見て考え込むEC担当者

リターゲティング広告の設計|追いかけすぎず「戻ってもらう」頻度の決め方

「気になった靴を一度見ただけなのに、その後どのサイトを開いても同じ靴が追いかけてくる。最初は『そうそう、これ』と思ったけれど、5回、6回と続くと、だんだん買う気が失せてくる」——買い物する側では、こんな経験ありませんか。

そして、いざ自分がお店側になると、同じことをやってしまいがちです。カートに入れて離れたお客さんに広告を出す。これ自体はとても正しい。でも「出しっぱなし」で回数の上限を決めていないと、いちばん買ってくれそうな人を、広告で追い払ってしまうことがあります。今日は、リターゲティング広告(一度サイトを訪れた人に、あとから見せる広告)を嫌われずに戻ってもらう設計と、表示回数の決め方を、一緒に整理していきましょう。

結論:リターゲティング広告は「もう一度見せる」ためではなく、「戻る理由を思い出してもらう」ために出す。効かせるコツは3つ。①訪問した人を『どこまで進んだか』で分ける(カート離脱/商品ページだけ/購入済み)、②1人あたりの表示回数(フリークエンシー)に上限を決める③一度買った人はしばらく広告から外す。追いかける強さより、「誰に・どれくらい・いつまで」を設計するほうが、同じ広告費で戻ってきてもらえます。

まず、この記事で出てくる言葉を3つだけ先に。

いま何が起きているか:リターゲティングは「効くのに嫌われやすい」広告

リターゲティング広告は、EC運営のなかでも費用に対して戻ってくる売上(ROAS=広告費に対して売上がどれだけ出たかを見る数字)が高く出やすい広告です。理由はシンプルで、すでに一度あなたの商品に興味を持った人に見せているから。まったく知らない人に届ける広告より、当たり前に反応が良くなります。

ところが、この「効きやすさ」が落とし穴にもなります。数字が良く見えるので、つい表示回数の上限を決めずに出しっぱなしにしてしまう。すると、同じ人に1日何回も、何日も同じ広告が表示され続けます。買い物客の側からすると「監視されているみたい」「しつこい」と感じ、ブランドの印象そのものが下がってしまうのです。

もうひとつよくあるのが、全員をひとまとめにして同じ広告を見せてしまうこと。「カートまで進んだ人」と「トップページをちらっと見ただけの人」と「すでに買ってくれた人」では、次にかけるべき言葉がまったく違います。全員に同じ「今すぐ購入」の広告を出しても、買った人には無駄打ちになり、迷っている人には響きません。

つまりリターゲティングは、「出すか出さないか」ではなく「誰に・どれくらいの回数・いつまで見せるか」を設計できているかで、成果も印象も大きく変わる広告なのです。

具体例:リターゲティングを「進んだ距離」で3つに分ける

いちばん効果が出やすいのは、訪問した人をどこまで買い物が進んだかで分けて、それぞれに合った広告を出す設計です。ここでは代表的な3つのオーディエンス(届ける人のグループ)に分けてみます。

サイト訪問者を「見ただけ」「カートに入れた」「購入した」の3段階に分け、それぞれに違う広告を出すことを示した図
訪問者を「進んだ距離」で3つに分け、かける言葉と表示回数を変えるのがリターゲティング設計の基本。

① カートに入れて離れた人(いちばん熱い層) 商品をカートに入れたのに買わなかった人は、あと一歩で購入だった人です。ここには「送料無料まであと少し」「在庫残りわずか(本当に少ないときだけ)」など、背中をそっと押す具体的な理由を見せます。ただし煽りすぎは禁物。事実に反する「残りわずか」表示は景品表示法(誇大な表示を禁じるルール)に触れるおそれがあるので、実際の在庫に基づいて出します。ここはカゴ落ち対策のメール・LINEと合わせると効きます(→カゴ落ちメール・LINEの自動化フロー)。

② 商品ページや一覧を見ただけの人(迷っている層) まだカートには入れていない、比較検討の途中の人たちです。ここに「今すぐ買って」は早すぎます。選ぶ理由・使うイメージ・お客さんの声など、不安を消す内容を見せて、もう一度サイトに戻ってもらうのが役割です。いきなり値引きを見せる必要はありません。

③ すでに買ってくれた人(購入済みの層) ここが見落とされがちです。買ったばかりの人に「今すぐ購入」の広告を出しても、無駄打ちになるどころか「さっき買ったのに」と不信感につながります。購入直後はリターゲティングから一度外すのが基本。そのうえで、消耗品なら「そろそろ補充の時期」、関連品なら「一緒に使うと便利なもの」を、頃合いを見て別の広告として届けます。

この3つに分けるだけで、同じ広告費でも「熱い人に強く、迷っている人にやさしく、買った人には出しすぎない」という配分ができます。まずは①のカート離脱だけでも切り出すのがおすすめです。ここが最も戻ってきやすい層だからです。

フリークエンシー(表示回数)の上限をどう決めるか

分け方の次は、1人にどれくらいの回数まで見せるかです。これがフリークエンシー管理です。多くの広告管理画面には「フリークエンシー」という項目があり、レポートで「1人あたり平均何回表示されたか」を確認できます。

目安として、1週間に3〜4回あたりから「見飽きられ始めるライン」と言われます。もちろん商品や単価によって変わりますが、まずは上限を決めて出し、レポートで様子を見るのが安全です。判断の順番はこうです。

  1. フリークエンシーの平均を見る:1人あたりの表示回数が週7回、8回…と増えていないか確認する。
  2. 回数が増えているのに反応(クリックや購入)が落ちていたら、上限を下げる。同じ人に見せすぎているサインです。
  3. 表示期間にも区切りをつける:「サイトを訪れてから14日以内の人だけに出す」のように、対象にする期間を決める。1か月前にちらっと見ただけの人まで追いかけても、戻ってくる可能性は低く、費用の無駄になりがちです。

コツは「回数を増やせば増やすほど売れる」わけではない、と知っておくこと。最初の数回でクリックしない人は、10回見せてもクリックしないことが多い。それより、見せる相手と回数を絞って、浮いた費用を別の層に回すほうが効きます。表示回数と購入率(CVR=広告や商品ページの買われやすさ)の関係は、上限を変えながらレポートで確かめていきましょう。

あなたへの影響:追いかけすぎは「見えない値引き」と同じ

リターゲティングを出しっぱなしにすると、数字上のROAS(広告費に対する売上の見合い)は良く見えることがあります。すでに買う気だった人が、たまたま広告経由で戻ってきて「広告のおかげ」と記録されるからです。でも実際には、広告を出さなくても買っていた人にも費用をかけていることになります。これは、気づかないうちに利益を削る「見えない値引き」のようなものです。

さらに怖いのは、印象への影響です。しつこい広告は、その1回の広告費だけでなく、「この店はしつこい」というイメージを残します。リピート(もう一度買ってくれること)で成り立つECにとって、これは長い目で見て大きな損です。逆に、ほどよい頻度で「そういえば気になっていた」と思い出してもらえれば、広告は「戻る理由」を運ぶ役に立ちます。

だからこそ、リターゲティングは「強さ」ではなく「設計」。誰に・どれくらい・いつまで、を決めるだけで、同じ費用でも戻ってきてもらえる広告に変わります。

明日からやること(3ステップ)

表示回数を整えたことで、無理なく戻ってきたお客さんを笑顔で迎えるEC担当者

いきなり全部やらなくて大丈夫です。まずはこの順番で、ひとつずつ。

  1. カート離脱の人だけ、別のグループとして切り出す。いちばん戻ってきやすい層です。ここに「あと一歩」を押す広告を1本用意する。
  2. フリークエンシーの上限を決める。まずは週3〜4回を目安に設定し、レポートで平均表示回数と反応を1週間見る。増えすぎ・反応低下があれば下げる。
  3. 購入済みの人を広告の対象から外す。買ったばかりの人に「今すぐ購入」を出さない。関連品や補充の案内は、時期をずらして別に届ける。

この3つを整えるだけで、「追いかけすぎ」による無駄打ちと悪印象がぐっと減ります。慣れてきたら、迷っている層への内容を工夫したり、期間の区切りを商品に合わせて調整したりしていきましょう。

チェックリスト:リターゲティングを見直す10項目

関連テンプレ・ツール

もう一歩踏み込みたい人は、あわせてどうぞ。

自分のお店のリターゲティングが「追いかけすぎ」になっていないか気になる方は、無料のEC計算ツールで採算ラインを確かめたり、商品ページ改善チェックリスト50で戻ってきた人が買いやすいページになっているかを見直してみてください。広告は「戻る理由」を運ぶ係。押しすぎず、思い出してもらう設計で、無理なく戻ってきてもらいましょう。