
二重価格表示で景表法に違反しない|参考価格・セールの正しい見せ方
「もっとお得に見せたい」——その気持ちから、つい「通常5,000円 → 今だけ2,980円」と書いてしまったこと、ありませんか。割引に見えると、確かにクリックされやすくなります。でも、ふと不安がよぎる。「この"通常5,000円"って、本当に売ってた値段だったかな……」。
実はそのモヤモヤ、とても大事なサインです。売ったことのない高い価格を並べて「安くなった」と見せる——これは景品表示法(うそや大げさな表示を禁じるルール)に触れることがあります。知らずにやってしまい、あとで指摘されて慌てる。そんなお店は少なくありません。
今日お伝えしたいのは、参考価格やセール表示を「正直に、かつ魅力的に」見せるやり方です。お得を伝えること自体は、まったく悪いことではありません。大切なのは、その数字に根拠があるか。そこさえ押さえれば、安心してセールを打てるようになります。一緒に整えていきましょう。
結論:二重価格表示(「通常価格→セール価格」のように2つの価格を並べる見せ方)は、比較に使う高いほうの価格に"確かな根拠"があるときだけ使えます。根拠となるのは主に、①自店で最近まで実際に販売していた価格、②メーカー希望小売価格(定価)の2つ。
逆に、売ったこともない価格を「通常価格」として並べたり、ずっとセール中なのに「今だけ」と言い続けたりするのは、有利誤認(実際よりお得だと誤解させること)として景品表示法上の問題になります。迷ったら「この表示、理由を聞かれたら根拠を示せるか」を基準にしてください。
いま何が起きているか|「お得に見せる工夫」が、いつのまにか危ない橋に
ネット販売では、価格を2つ並べて見せる工夫が当たり前になっています。「定価○○円のところ△△円」「通常価格から30%OFF」——こうした二重価格表示は、お得感が伝わり、背中を押す力があります。だからこそ、多くのお店が使っています。
ところが、この便利な見せ方は、一歩間違えると「お得に見せかけただけ」になってしまいます。よくあるのが、次のような状態です。
- 売ったことのない価格を「通常価格」にしている:最初から2,980円で売るつもりなのに、「通常5,000円」と架空の高値を並べて割引に見せている。
- 「今だけ」がずっと続いている:「期間限定セール」と書いたまま、半年も同じ価格で売り続けている。これでは、その価格が実質の「通常価格」です。
- 「メーカー希望小売価格」の根拠があいまい:実際には設定されていない定価を、なんとなく高めに書いている。
- 比較対象がはっきりしない:「相場より安い」「他店より格安」と書くが、何と比べているのか示せない。
これらに共通するのは、お客さんに「実際よりもお得だ」と誤解させてしまうという点です。ルール上、これは有利誤認表示と呼ばれ、景品表示法で禁止されています。悪気がなく「みんなやっているから」で始めたことが、気づけば危ない橋になっている——これが今、多くのECの現場で起きていることです。
見方を変えれば、ここは信頼で差がつくポイントでもあります。正直な価格表示を徹底している店は、長い目で見れば「この店は信用できる」と選ばれ続けます。小細工で一時的に売るより、ずっと強い土台になります。

具体例|根拠のある見せ方・ない見せ方
「結局、何ならOKなの?」がいちばん知りたいところだと思います。比較に使ってよい価格と、避けたい見せ方を、具体的に並べます。
① 自店の「過去の販売価格」と比べる(最も基本) いちばん確実なのは、実際に自分の店で、相応の期間・それなりの数を売っていた価格と比べることです。
- OK:「当店通常価格5,000円 → セール価格3,980円」(実際に5,000円で売っていた実績がある場合)
- 気をつけたい点:「過去の価格」は、最近のものであることが前提です。目安として、セール直前までの一定期間(例:直近8週間のうち過半で販売していた等)に、その価格で売っていた実績が必要と考えておくと安全です。大昔に一瞬だけ付けた高値を持ち出すのは避けましょう。
② メーカー希望小売価格(定価)と比べる メーカーが設定した希望小売価格がある商品なら、それと比べる見せ方ができます。
- OK:「メーカー希望小売価格5,000円 → 当店価格3,980円」(実際に定価が設定されている場合)
- 気をつけたい点:「メーカー希望小売価格」と「当店通常価格」は別物です。言葉を正しく使い分けてください。定価が設定されていない商品(オープン価格など)で、架空の「定価」を作るのはNGです。
③ やってはいけない見せ方 次のような表示は、根拠がなく、有利誤認になりやすい代表例です。
- NG:最初から3,980円で売るつもりなのに「通常5,000円 → 3,980円」と架空の通常価格を並べる。
- NG:「期間限定・今だけ」と書いたまま、何か月も同じセール価格で売り続ける。
- NG:根拠を示せないのに「業界最安値」「どこよりも安い」などの最上級表現を使う。
- NG:ごく短期間だけ高値を付け、「これが通常価格」として割引の比較に使う(実態のない価格の演出)。
整理すると、こうなります。
| 比較に使う価格 | 使ってよい? | 条件・注意点 |
|---|---|---|
| 自店の過去の販売価格 | ○ | 最近、相応の期間・数量で実際に売っていた実績が必要 |
| メーカー希望小売価格(定価) | ○ | 実際に定価が設定されている商品のみ。「通常価格」と混同しない |
| 他社の販売価格 | △ | 調査時点・対象を明確に。古い・あいまいな比較は避ける |
| 売ったことのない価格 | × | 架空の「通常価格」は有利誤認のおそれ |
| ずっと続く「今だけ」価格 | × | 実質の通常価格。期間表示が実態と合っていない |
※ ここに挙げた期間などの数字は、考え方を分かりやすくするための一例です。商品や売り方によって妥当な基準は変わります。判断に迷う表示は、最新の公式情報を確認するか、専門家(弁護士・景品表示法に詳しい専門家等)に相談してください。
セール・タイムセールを安全に見せるコツ
「それでもセールのワクワク感は大事にしたい」——その通りです。根拠を守りながら魅力的に見せる工夫はあります。
- 期間をはっきり区切る:「今だけ」ではなく「○月○日まで」と終わりを明記し、その期間が過ぎたら本当に通常価格へ戻す。終わりがある表示は正直で、かつ急ぎたくなる効果もあります。
- 値引きの理由を添える:「決算セール」「在庫入れ替えのため」など、安くなる理由を正直に書くと、不自然さが消えて信頼につながります。
- 比較価格の種類を明記する:「当店通常価格」「メーカー希望小売価格」のどちらと比べているのかを、はっきり書く。
- 割引率より"総額"で魅力を伝える:「○○円お得」「1個あたり○○円」など、根拠のいらない見せ方で魅力を補う。価格そのものの見せ方は、価格の見せ方で売れ方は変わる|参考価格・送料込み表示の工夫 もあわせてどうぞ。
お得感は、架空の高値を作らなくても十分に伝えられます。「正直さ」と「魅力」は両立できるのです。
あなたへの影響
- 根拠のある二重価格に整えておくと、万一問い合わせや指摘を受けても「これが根拠です」と落ち着いて説明でき、慌てずに済みます。
- 「今だけ」の乱発をやめ、期間を正直に区切ることで、セールのメリハリが戻り、かえって反応が上がることがあります。常時セールは、お得感そのものを薄れさせます。
- 正直な価格表示は、「この店は信用できる」という印象につながり、カゴ落ち(買う直前での離脱)を減らし、リピートの土台になります。
- 景品表示法に沿った運用は、モール(楽天・Amazon等)の規約順守にもつながり、出店停止などのリスクを下げることにもなります。
明日やること
- いまセール中・二重価格を使っている商品を一覧にして、それぞれの「高いほうの価格」に根拠があるか(過去に実際に売っていた/定価が設定されている)を確認する。
- 根拠を示せない比較価格があれば、いったん外すか、「○○円お得」など根拠のいらない見せ方に置き換える。
- 「今だけ」「期間限定」と書いたまま続いているセールは、終了日を明記するか、通常価格に戻す。言葉と実態を合わせる。
価格の見せ方は、お店の「誠実さ」がいちばん表れる場所です。お得を伝えたい気持ちは大切に、でもその数字には必ず根拠を。架空の高値で一度売るより、正直な表示で長く選ばれるお店のほうが、きっと強く続いていきます。まずは今セール中の1商品、その「通常価格」に根拠があるかを確かめるところから始めてみましょう。

チェックリスト
- 二重価格で比べている「高いほうの価格」に根拠がある(過去の実売価格/設定された定価)
- 「当店通常価格」と「メーカー希望小売価格」を正しく使い分けている
- 過去の販売価格と比べる場合、それが最近・相応の期間の実績である
- 売ったことのない価格を「通常価格」として並べていない
- 「今だけ」「期間限定」と書いたセールに、ちゃんと終了日がある
- 期間が過ぎたら本当に通常価格へ戻している(常時セールになっていない)
- 「最安」「業界最安値」などの最上級表現は、根拠を示せる場合だけ使っている
- 他社価格と比べる場合、調査の時点・対象を明確にしている
- 判断に迷う表示は、最新の公式情報や専門家に確認する運用になっている
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