
発注量の決め方|1回にいくつ頼むかをEOQで考える入門
「この商品、今回はいくつ頼もう……」。発注画面を前に、手が止まる瞬間はありませんか。多めに頼めば当分は安心だけれど倉庫がぱんぱんになるし、少なめにすればすぐまた発注の手間がかかる。結局「いつもの数」で押しているうちに、気づけば片方の棚は在庫だらけ、片方は欠品ぎりぎり——。
これ、意外と「カン」で決めている人が多いところです。でも実は、1回にいくつ頼むかには電卓ひとつで出せる目安があります。今日はその考え方=EOQを、むずかしい数式アレルギーがあっても大丈夫なように、一緒にほどいていきましょう。
結論:1回の発注量は、「発注の手間や送料(頼むほどかかる=発注コスト)」と「保管料や売れ残りのリスク(たくさん持つほどかかる=保管コスト)」のちょうど真ん中が最適です。この最適な1回の量をEOQ(経済的発注量=1回に頼むとムダが一番少ない数)と呼びます。
目安は「EOQ = √(2 × 年間に売れる数 × 1回あたりの発注コスト ÷ 1個あたりの年間保管コスト)」。数字を当てはめて一度出しておけば、「とりあえずいつもの数」から卒業できます。
いま何が起きているか|「いつ頼むか」は決めても「いくつ頼むか」は空白
在庫の話というと、まず思い浮かぶのは「在庫が減ったらいつ頼むか」——つまり発注点(これ以下になったら発注する在庫数)でしょう。ここは安全在庫と発注点の計算で一度決めた、という人も多いはずです。
ところが、その先の「じゃあ、そのとき何個頼むのか」は、意外と決めていないお店が多い。発注のタイミングは数字で、発注の量はカンで——という状態です。この「いくつ」が大きすぎても小さすぎても、じわじわ利益が削れていきます。
- 1回に大量に頼む:発注の回数は減るけれど、在庫が長く倉庫に眠る。保管料・場所・売れ残り(滞留)のリスクが増える。お金が在庫に化けて動かない。
- 1回に少しだけ頼む:在庫は身軽だけれど、発注の回数が増える。そのたびに手間・送料・最低注文金額などの発注コストがかさむ。
つまり「いくつ頼むか」は、発注のコストと保管のコストの綱引きです。どちらかに寄せすぎると損をする。その釣り合う一点を教えてくれるのがEOQ、というわけです。
具体例|EOQ(1回の適量)を電卓で出してみる

言葉だけだと身構えてしまうので、数字を入れてみます。ある商品について、次の3つをざっくり用意します。
- 年間に売れる数:4,000個(1か月あたり約330個)
- 1回あたりの発注コスト:500円(発注の手間・送料・事務処理などを1回いくらでざっくり見積もる)
- 1個あたりの年間保管コスト:100円(倉庫代・保管スペース・資金が寝るコストなどを1個1年でざっくり見積もる)
これを先ほどの式に当てはめます。
EOQ = √(2 × 4,000 × 500 ÷ 100)= √40,000 = 200個
計算の中身は、2 × 4,000 × 500 = 4,000,000、それを 100 で割って 40,000、その平方根(√)が 200 です。平方根は電卓の「√」ボタン1つで出せます。
つまり、この商品は1回に200個ずつ頼むのが、発注の手間と保管のムダがいちばん少ないバランス。年間4,000個 ÷ 200個=年に約20回、日数にすると 365 ÷ 20 ≒ 約18日、つまり2〜3週間に1回のペースで発注していく形になります。
ここで大事なのは、数字の精度ではなく考え方のクセです。発注コスト(頼むほどかさむ)と保管コスト(持つほどかさむ)を一度数字にしてみると、「なんとなく大量発注」や「こまめに少しずつ」が、実はコストのどちらかに寄りすぎていた、と見えてきます。なお、ここでの数字はすべて説明のための例です。自店の送料や倉庫代に置き換えて出してみてください。
ちいさなヒント:発注コストや保管コストを1円単位で正確に出す必要はありません。EOQの式は平方根を使うので、多少ずれても答えは大きく動かない(4,000円が4,400円に1割増えても、EOQは約5%しか変わりません)。まずは「えいやの概算」で一度出すのが正解です。
あなたへの影響|「1回いくつ」に根拠が持てると、ムダが見える
- 発注量を決めずにいると、保管コスト(倉庫代・滞留・売れ残り値引き)か発注コスト(手間・送料・最低ロット)のどちらかに、気づかないまま偏って損をします。在庫は「お金の塊」。寝かせすぎも、こまめすぎも、どちらもコストです。
- EOQを一度出すと、「1回に頼む量」と「年に何回頼むか」がセットで見えます。これは仕入れの資金計画や、まとめ買いの値引き交渉(仕入れ先・卸の選び方)を考えるときの土台にもなります。
- 送料や発注の事務コストが高い商品ほど、EOQは「1回を大きめに」と出ます。逆に保管料が高い・かさばる・賞味期限が近い商品は「1回を小さめに・こまめに」と出ます。この感覚が持てると、商品ごとに発注の“性格”を変えられます。送料・梱包のコスト自体を下げたいときは送料・梱包コストの最適化もあわせてどうぞ。
明日からやること
- 売上の大半を占める主力の1〜3商品を選ぶ(いきなり全品やらない)。
- その商品の「年間に売れる数(直近の月平均 × 12 でOK)」をざっくり出す。
- 「1回あたりの発注コスト(手間・送料・事務をえいやで)」と「1個あたりの年間保管コスト(倉庫代などをえいやで)」を見積もる。
- 「√(2 × 年間数 × 発注コスト ÷ 保管コスト)」を電卓で計算し、1回の発注量の目安を出す。
- 出た数を、いまの「いつもの発注数」と見比べる。大きくズレていたら、次回の発注から少し寄せてみる。
最初は1商品で十分です。「いつもの数」と計算結果がぴったり合っていれば自信になりますし、大きくズレていれば、そこに改善の余白があるということ。小さく試して、手ごたえを確かめてみてください。
チェックリスト
- 主力商品の「1回に頼む数」を、カンではなく根拠で説明できる
- 発注コスト(頼むほどかさむ手間・送料)をざっくり金額にしている
- 保管コスト(持つほどかさむ倉庫代・滞留リスク)をざっくり金額にしている
- 主力商品のEOQ(1回の適量)を一度計算してみた
- EOQと「いつもの発注数」を見比べ、大きなズレがないか確認した
- かさばる・賞味期限が近い商品は、発注量を小さめ・こまめに寄せている
- 発注点(いつ頼むか)と発注量(いくつ頼むか)を、セットで決めている

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参考(公式・一次情報)
- J-Net21(中小企業基盤整備機構) — 中小事業者向けの経営・在庫管理の基礎情報
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