メールで届いた請求書を印刷してファイルに綴じながら「これで保存は合っているのかな」と少し不安そうに考えるネットショップ店主

電子帳簿保存法とEC|メールで届く請求書・領収書の正しい保存方法

「Amazonや楽天の管理画面からダウンロードした請求書、メールに添付されてきた領収書……とりあえず全部プリントアウトして、ファイルに綴じています」。まじめに、きちんと保管しているつもり。なのに、ふと不安がよぎる——「そういえば、電子帳簿保存法って義務化されたって聞いたけど、うちのこのやり方で大丈夫なんだろうか」。心当たり、ありませんか。

先に、いちばん大事なことをお伝えします。メールやWeb上でやり取りした請求書・領収書などの「電子データ」は、紙に印刷して保存するだけでは足りず、原則として"電子データのまま"一定のルールで保存することが義務になっています。これはEC運営者なら、ほぼ全員が関わる話です。でも、身構えなくて大丈夫。やることを整理すれば、決して難しくありません。今日は、専門用語をひとつずつかみくだきながら、あなたの店が明日から何をどう保存すればいいかを、一緒に組み立てていきましょう。

結論:電子帳簿保存法のうち、EC運営者が必ず対応すべきは「電子取引データの保存」です。これは、メールやWebサイト(モールの管理画面など)を通じてやり取りした請求書・領収書・注文書などの電子データを、電子のまま保存することを義務づけるルールで、紙に印刷しただけの保存は原則として認められません。保存には「真実性の確保」(あとから改ざんできない状態にすること)と「可視性の確保」(日付・金額・取引先ですぐ探し出せること)の2つの条件があります。むずかしそうに見えますが、要は「元データを、決まった名前をつけて、決まったフォルダに、消したり書き換えたりできないルールのもとで残す」だけ。この記事の手順どおりに整えれば、税務調査でもあわてず対応できます(※制度の適用は個別事情で変わるため、最終的な判断は必ず顧問税理士や所轄の税務署に確認してください)。

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いま何が起きているか|「紙に印刷して保存」だけではNGになった

まず、言葉を1つそろえます。電子帳簿保存法(略して「電帳法」)とは、帳簿や請求書・領収書といった、これまで紙で保存してきた書類を、一定のルールを満たせば電子データで保存してよい(=紙で残さなくてよい)と定めた法律です。「電子で保存できる」という、本来はありがたい制度です。

この法律は、大きく3つの内容に分かれます。ここを混同すると混乱するので、ざっくり分けて覚えてください。

EC運営者がまず押さえるべきは、この③の電子取引データの保存です。①②は「やりたければやっていい」オプションですが、③は対応が必要。しかも、以前は「当分の間は紙に印刷して保存でもOK」という猶予(宥恕)措置がありましたが、これは終了し、原則として電子データでの保存が求められるようになりました。「うちは紙に印刷して綴じているから安心」——その常識が、③については通用しなくなった、というのが"いま起きていること"です。

では、EC運営でいう「電子取引」とは、具体的に何を指すのでしょうか。

EC運営で「電子取引」に当たるものは、こんなにある

メール添付・モール管理画面・ネット通販の3つのルートで受け取った請求書や領収書が「電子取引データ」に当たることを示した図
メールで届く・画面からダウンロードする・ネットで買う。この3ルートで受け取った請求書や領収書は、電子取引データとして電子のまま保存する。

「電子取引」と聞くと難しそうですが、要は「紙をやり取りせず、ネット上で完結した取引」のこと。EC運営の日常には、これがあふれています。たとえば——

これらは、受け取った時点ですでに電子データです。だから「電子取引データの保存」の対象になります。ポイントは、紙で郵送されてきた請求書は対象外(それは従来どおり紙で保存するか、任意でスキャナ保存する)で、あくまで"最初から電子で来たもの"が対象、という線引きです。

こうして並べてみると、「うちには電子取引なんてない」というEC店舗は、まず存在しません。モールに出店していれば管理画面の請求書があり、ネットで資材を買えばWeb領収書がある。知らないうちに、あなたはすでに電子取引の当事者なのです。だからこそ、正しい保存の形を知っておく価値があります。

保存の2つの条件|「真実性」と「可視性」をかみくだく

電子取引データの保存に必要な「真実性(改ざんできない)」と「可視性(すぐ探せる)」の2つの条件を左右に並べて示した図
保存の条件は2つだけ。左は「あとから書き換えられない」真実性、右は「日付・金額・取引先ですぐ探せる」可視性。

電子取引データを保存するときの条件は、大きく2つです。名前はいかめしいですが、中身は常識的な話です。

条件1:真実性の確保(=あとから改ざんできない状態にする)

真実性の確保とは、保存したデータが、あとからこっそり書き換えられたり消されたりしていないと証明できる状態にすることです。要は「この書類、後から数字をいじってないよね?」を担保する仕組み。次のどれか1つを満たせばOKとされています。

  1. 送る側・受け取る側でタイムスタンプ(=その時刻にその内容で存在したことを証明する電子の証印)が付いている
  2. 受け取ったあと、遅滞なく自社でタイムスタンプを付す
  3. 訂正・削除の履歴が残る、または訂正・削除ができないシステムで保存する(会計・経費精算クラウド等が該当)
  4. 「訂正削除の防止に関する事務処理規程」を定めて運用する

いちばんお金がかからず、多くの小規模EC店舗が現実的に選ぶのが4番の「事務処理規程」です。これは、「勝手に書き換えません、というルールを社内で文書にして守る」という方法。国税庁がひな形(サンプル)を公開しているので、それを自社用に整えるだけで対応できます。専用システムを買わなくても、規程1枚で真実性の条件を満たせる、というのは覚えておく価値があります。

条件2:可視性の確保(=すぐ見られて、すぐ探せる状態にする)

可視性の確保とは、税務調査などで「見せてください」と言われたときに、すぐに画面や紙で見られて、目的の書類をすぐ探し出せる状態にすることです。具体的には次の3つ。

このうち、多くの人がつまずくのが検索です。とはいえ、高価な検索システムは必須ではありません。ファイル名を工夫するだけでも要件を満たせます。たとえば受け取ったPDFを、20260724_33000_〇〇商事.pdf(日付_金額_取引先)のように名前をつけて保存し、月別・年別のフォルダに整理する。これで「日付・金額・取引先で探せる」状態になります。表計算ソフトで一覧(索引簿)を作る方法もあります。

なお、基準期間(おおむね2年前)の売上高が一定額以下などの小規模事業者は、税務調査時にデータをダウンロードして提示できるようにしておけば、検索要件が緩和される取り扱いがあります。自店が当てはまるかは、国税庁の情報や税理士に確認してください。「うちは小規模だから、まずはファイル名を整えて、きちんとフォルダに残すところから」——多くのEC店舗は、そこからで十分に始められます。

具体例|ある雑貨ECの「とりあえず印刷」から「正しい電子保存」へ

架空の雑貨ECで考えてみましょう。このお店では、これまで仕入れ先からメールで届く請求書PDFを、届くたびに印刷してファイルに綴じ、元のメールは受信トレイに埋もれたまま——という運用でした。担当者は「紙で残しているんだから完璧」と思っていました。

ところが、電子取引データの保存が義務であることを知って、青ざめます。メールで届いたPDFは、印刷して紙で綴じるだけでは足りず、"元のPDFデータそのもの"を、探せる形で残す必要があるからです。そこでこのお店は、こう整えました。

  1. パソコンに「電子取引」という親フォルダを作り、その下に年→月のフォルダを用意した。
  2. 届いたPDFを保存するとき、ファイル名を「日付_金額_取引先」(例:20260724_33000_〇〇商事.pdf)に統一した。
  3. 国税庁のひな形をもとに「事務処理規程」を1枚作り、「保存したデータは訂正・削除しない」というルールを明文化して、いつでも見られる場所に置いた。
  4. 楽天・Amazonなどモールの管理画面からダウンロードできる請求書も、毎月まとめて同じフォルダに保存する習慣にした。
  5. バックアップとして、クラウドストレージにも同じフォルダを同期し、パソコンが壊れてもデータが消えないようにした。

かかった費用は、ほぼゼロ。増えた作業は「保存するときに名前をそろえて、決めたフォルダに入れる」だけ。それでも、税務調査で「〇月の〇〇商事からの請求書を見せて」と言われても、数十秒で出せる状態になりました。以前の「印刷して綴じるだけ」より、むしろ探すのがラクになった、というおまけつきです。

この例のポイントは、特別なシステムを買わなくても、"名前のつけ方"と"フォルダの決め方"と"ルールの明文化"の3つで、義務にきちんと応えられるということ。難しさの正体は、制度そのものより「何から手をつけるか分からない」という漠然とした不安だったのです。

あなたへの影響

明日やること

  1. パソコンに「電子取引」の親フォルダを作り、その下に「2026年→07月」のように年・月のフォルダを用意する。
  2. 直近1か月ぶんの、メール添付の請求書・領収書と、モール管理画面からダウンロードできる請求書を、まず集めてみる。
  3. 保存するファイル名を、「日付_金額_取引先」の形(例:20260724_33000_〇〇商事)に統一するルールを決める。
  4. 国税庁の電子帳簿保存法のページから「事務処理規程」のサンプルを入手し、自店の名前・ルールに書き換えて1枚作る。
  5. クラウドストレージや外付けドライブで、この親フォルダのバックアップ(二重保存)を設定する。
  6. 自店が検索要件の緩和(小規模事業者向け)の対象かどうかを、国税庁の情報や顧問税理士に確認する。
  7. 毎月の締め日に、その月の電子取引データをフォルダにまとめて保存する「月次ルーティン」として、カレンダーに登録する。

電子帳簿保存法(電子取引)対応チェックリスト

つまずきやすい落とし穴

※本記事は制度の考え方を分かりやすく整理したもので、税務上の助言ではありません。電子帳簿保存法の適用可否や具体的な保存方法は、事業の規模や取引内容によって異なります。実際の対応は、必ず顧問税理士や所轄の税務署、国税庁の公式情報でご確認ください。

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あなたのお店では、メールやモールの管理画面で受け取った請求書・領収書を、"電子のまま・探せる形"で残せていますか。無料診断では、いまの保存のやり方をざっくり見立てて、「まず整えるべき1か所」をお伝えします。むずかしく考えず、名前をそろえてフォルダに入れる——その一歩から始めましょう。
電子取引データの保存ルールを整え終えて、すっきりした表情で前を向くネットショップ店主

「義務化」と聞くと身構えてしまいますが、やることの正体は、元データに名前をつけて、決めたフォルダに、書き換えないルールで残す——ただそれだけです。特別なシステムも、専門知識も、最初は要りません。今日ひとつ、「電子取引」のフォルダを作るところから始めてみてください。書類を探し回る時間が減り、税務調査への不安も消え、あなたの経営の足元が、また一段しっかりします。小さな整理が、大きな安心に変わります。

参考(公式・一次情報)