
EC素材の著作権入門|画像・フォント・BGMを安全に使う基本
「この画像、使って大丈夫かな」。商品ページのバナーを作るとき、SNSの投稿画像を選ぶとき、紹介動画にBGMをつけるとき——ふと、そんな不安がよぎったことはありませんか。ネットで見つけたきれいな写真、なんとなくダウンロードした無料フォント、YouTubeで流れていた気持ちのいい曲。どれも「これくらいなら平気だろう」と思って使いがちですが、実はあとから思わぬトラブルになりやすいのが、この素材まわりです。
とはいえ、こわがって何も使えなくなっては、お店づくりが前に進みません。大事なのは、「何が危なくて、何なら安心か」の線引きを、ざっくりでいいので持っておくこと。今日は、EC運営で毎日のように触れる画像・フォント・音楽(BGM)を題材に、著作権と気持ちよく付き合うための基本を、専門家でなくても分かる言葉で一緒に整理していきましょう。
結論:素材を使うときの安全ルールは、たった1つに集約できます。「自分で作ったもの」か「使ってよいと確認できたもの」だけを使う——これだけです。著作権(作った人が持つ「勝手に使わせない」権利)は、写真・イラスト・文章・フォント・音楽など、人が作ったほとんどの表現に自動で発生します。だから「ネットにあった=自由に使える」ではありません。安全な素材の入手ルートは3つ。①自分・自社で撮る/作る、②商用利用OKの素材を、規約を読んで使う(無料でも有料でも)、③権利者に許可をとる。迷ったら「これ、誰が作ったもの?使っていいと確認できてる?」と一度立ち止まる。それだけで、多くのトラブルは防げます。(※法律の最終判断は個別事情によります。心配なときは弁護士など専門家にご確認ください。)
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いま何が起きているか|「ネットにあった=自由」ではない
まず、言葉を1つだけやさしく整理します。著作権とは、写真・イラスト・文章・音楽・動画などを作った人(著作者)が持つ、「自分の作品を勝手に使われない」ための権利のことです。むずかしいのは、この権利が登録や申請をしなくても、作られた瞬間に自動で生まれるという点。つまり、ネット上の写真やイラスト、フォント、曲には、たいてい誰かの権利がついていると考えるのが安全です。制度の基本は、文化庁の著作権の解説ページでも公式に確認できます。
EC運営でありがちなのが、「検索して出てきた写真を、そのまま商品ページに貼る」「他店の商品画像をコピーして使う」「見栄えのいいフォントをどこかから落として使う」「流行りの曲を紹介動画のBGMにする」といった使い方です。悪気はなくても、これらは他人の権利を無断で使っている状態になりえます。とくにECは、趣味の投稿と違って商売(商用利用)にあたるため、「個人利用ならOK」という素材でも、そのままでは使えないことが多いのです。
見過ごされがちですが、こわいのは「バレなければいい」で済まない点です。素材の持ち主やその代理会社から、ある日「無断使用なので使用料を払ってください」という連絡(請求)が届くことがあります。金額が大きくなることもあり、対応に時間も気力も奪われます。さらに、他店の写真や文章をまねると、著作権だけでなく、景品表示法(誇大な表示を禁じるルール)やモールの規約に触れる場合もあります。表現まわりの注意は景表法・薬機法・特商法 表現チェック大全にもまとめています。つまり素材の扱いは、お店の信頼を守る土台でもあるのです。
具体例|画像・フォント・BGM、それぞれの安全な使い方

素材ごとに「ここだけ押さえれば安心」という勘所があります。よく使う3種類を順に見ていきましょう。
①画像(写真・イラスト)|出どころと商用可否を必ず確認する いちばんトラブルが多いのが画像です。安全に使うルートは3つ。
- 自分・自社で撮る/作る:商品写真は、できるだけ自分で撮るのが最強です。撮り方は売れる商品写真の撮り方と並べ方にまとめています。撮影した写真の権利は自分にあるので、いちばん安心して使えます。
- フリー素材・有料素材を、規約を読んで使う:素材サイトの写真やイラストは、「商用利用OK」「クレジット表記(作者名の記載)が必要か」「加工してよいか」を必ず確認します。「無料」でも、商用は別料金・別条件のことがあります。規約は素材サイトごとに違うので、面倒でも一度は読む。これが遠回りのようで一番の近道です。
- 他人の写真は、許可なく使わない:他店の商品画像、SNSで見つけた写真、有名人やキャラクターの画像は、原則そのまま使えません。お客さんが投稿してくれた写真(UGC=口コミ投稿の画像や動画)を使いたいときも、本人の許可(許諾)をとってからが基本です。集め方・使い方はUGC(口コミ投稿)を増やす仕組みを参考にしてください。
②フォント|「無料」と「商用利用可」は別物 意外な盲点がフォントです。パソコンに最初から入っているフォントや、ダウンロードしたフォントには、それぞれ使ってよい範囲を定めた規約(ライセンス)があります。「個人利用は無料でも、商用(お店のロゴやバナー)は有料・要申請」というフォントは珍しくありません。とくにロゴや商品パッケージなど長く使うものは、あとから変更が大変です。使う前に、そのフォントの配布元で「商用利用OKか」「ロゴに使ってよいか」を確認しておきましょう。
③音楽・BGM|「ネットで流れていた曲」はまず使えない 紹介動画やライブ配信でBGMを使うなら、ここは特に慎重に。市販の楽曲やアーティストの曲、YouTubeで流れていた曲を勝手に使うのは、原則NGです。安全なのは、商用利用OKと明記されたフリーBGMサイトや、有料の音源サービス(ロイヤリティフリー音源)を、規約に沿って使うこと。動画をYouTubeやSNSに上げる場合は、各プラットフォームの音楽ルールにも従う必要があります。「なんとなく良さそうな曲」を感覚で使わない——これだけでリスクは大きく下がります。
やりがちなNGと、その直し方
・検索画像をそのまま保存して使う:Google画像検索などの結果は「使ってよい素材集」ではありません。→ 出どころと商用可否が確認できる素材だけ使う。
・「フリー素材」を規約を読まずに使う:無料=何でもOK、ではない。→ 商用可否・クレジット・加工の3点を読む。
・他店の紹介文・スペック文をコピペ:文章にも著作権があります。→ 自分の言葉で書き直す。書き方は売れる商品説明文の構成テンプレへ。
・AIが作った画像だから権利フリーだと思い込む:学習元や利用サービスの規約次第で注意が要ります。→ AIで商品画像・バナーを作る実践ガイドで扱い方を確認。
ここで挙げた金額や条件は一般的な例です。素材サイトやサービスごとに規約は異なり、法律の適用も個別の事情で変わります。大きな判断(ロゴ・パッケージ・広告の主要素材など)や、請求を受けたときは、弁護士など専門家に相談するのが安全です。
あなたへの影響
- 「使っていい素材だけを使う」習慣がつくと、ある日突然の使用料請求や、モールからの警告といったトラブルを未然に防げます。お店の信頼と、あなたの時間・気力を守ることに直結します。
- 素材の出どころを管理しておくと、あとから「この画像どこの?」と慌てずに済みます。ページの作り直しや、担当者が変わったときの引き継ぎもスムーズになります。
- 自分で撮った写真や自社で作った素材が増えるほど、他店と似ないオリジナルな売り場になります。権利の安心と、ブランドらしさ(ブランドストーリーの作り方)が同時に育っていきます。
明日やること
- いま使っている商品ページ・バナー・SNS画像を見て、「これ、出どころを説明できる?」と1つずつ確認する。あやしいものに印をつける。
- あやしい素材を、自作 or 商用OKの素材 or 許可済みのどれかに置き換える計画を立てる(急ぎは今日、他は順次)。
- よく使う素材サイトを2〜3つに絞り、それぞれの「商用利用」の規約ページをブックマークしておく。毎回ゼロから探さない仕組みにする。
- 使った素材の「入手元・規約・使用日」を、簡単な一覧(スプレッドシート等)に記録し始める。1行でいいので続ける。
- ロゴ・パッケージなど長く使うものは、フォントと画像の商用ライセンスを最優先で確認する。不安なら差し替え候補も用意しておく。
EC素材の著作権チェックリスト
- 使っている画像の「出どころ」を、すべて説明できる
- フリー素材は「商用利用OK・クレジット要否・加工可否」を確認して使っている
- 他店の写真・紹介文・スペック文をコピーして使っていない
- お客さんの投稿写真(UGC)は、本人の許可をとってから使っている
- フォントの「商用利用可否」を、ロゴやバナーに使う前に確認している
- BGMは商用OKと明記された音源だけを、規約に沿って使っている
- AI生成の画像も、利用サービスの規約を確認したうえで使っている
- 使った素材の入手元・規約・日付を記録している
- 大きな判断や請求時は、専門家に相談する前提になっている
素材の著作権は、身がまえると難しく感じますが、やることはシンプルです。「これは誰が作ったもの?使っていいと確認できてる?」——この問いを、素材を置く前にひと呼吸ぶんだけ挟む。それだけで、あなたのお店は、こわごわではなく堂々と素材を使えるようになります。今日はまず、いちばん目立つバナーの画像から、出どころをたどってみませんか。安心して作れる売り場は、きっとお客さんにも伝わります。

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