
ブランド名の商標登録のやり方と調べ方|ECの屋号を守る第一歩
「このお店の名前、気に入って何年も使ってきた」――そんな大切な屋号やブランド名を、ある日突然「うちの登録商標だから使わないで」と第三者から言われたら、どうしますか。看板を変え、商品パッケージを刷り直し、SNSアカウント名も作り直し……。積み上げてきた信頼と検索での認知が、一夜にしてゼロになってしまうこともあります。
これは大げさな話ではありません。名前を先に「商標登録」した人に、その名前を使う権利が認められるのが日本のルールです。つまり、あなたが先に使っていても、他人に先に登録されてしまえば立場が弱くなります。この記事では、そうした最悪を避けるために、①なぜ商標が必要か → ②無料でできる調べ方 → ③出願の流れ → ④費用と注意点 の順で、EC初心者にもわかるようにやさしく整理します。まずはお金をかけずにできる「調べる」ところから、一緒に始めましょう。
結論:ブランド名を守る第一歩は、「調べる」→「出願する」の2段構え。まず特許庁の無料データベース(J-PlatPat)で、同じ・似た名前がすでに登録されていないかを確認する。問題がなさそうなら、自分のお店の名前とロゴを商標として出願しておく。早い者勝ちの世界なので、本格的に売る前・広める前に押さえておくのが、いちばん安く確実な守り方です。
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文章だけだとイメージしにくい方へ。このページの内容を、動画でやさしく解説しました。読んでもピンとこなかったところは、ぜひ動画で確かめてみてください。
この記事で出てくる主な用語
- 商標:お店の名前・ロゴ・商品名など、「自分の商品やサービスの目印」として使うマークのこと
- 商標登録:その目印を特許庁に登録して、自分だけが使える権利にすること
- 区分(くぶん):商標を「どんな商品・サービスで使うか」で分けたグループ。全45種類あり、選んだ区分ごとに費用がかかる
- J-PlatPat(ジェイプラットパット):特許庁が公開している、商標などを無料で検索できるデータベース
なぜECこそ商標を意識したほうがいいのか
「個人の小さなショップに、商標なんて大げさ」と思うかもしれません。でも、ネットショップだからこそ、名前を守る意味は大きいのです。
- 名前がそのまま資産になる:ECでは、お店の名前やブランド名が検索・SNS・リピートの入口です。名前で指名検索してもらえるようになるほど、その名前の価値は上がります。育った名前ほど、失ったときの痛手も大きくなります。
- 早い者勝ちで決まる:日本の商標は、先に出願・登録した人が権利を持つのが原則です(先願主義)。あなたが3年使っていても、他人が先に登録すれば、その名前を使い続けにくくなります。
- モールやSNSで「なりすまし」に対抗できる:登録商標があれば、同じ名前をかたる偽アカウントや模倣店に対して、削除を求める根拠になります。ブランドを守る盾になるのです。
- 知らずに他人の権利を侵すリスクも消せる:逆に、あなたが付けた名前が、すでに他人の登録商標だったら、あなたのほうが「やめてください」と言われる側になります。調べておくこと自体が、自分を守ることになります。
名前の決め方そのものに迷っている段階なら、ネットショップの屋号・ブランド名の決め方を先に読むと、商標に強い名前を選びやすくなります。この記事は、その名前を「守る」段階の話です。
ステップ1:まずJ-PlatPatで「かぶっていないか」を無料で調べる

商標でまずやるべきは、出願ではなく「調べる」ことです。同じ名前や似た名前がすでに登録されていれば、そのままでは登録できませんし、うっかり使い続けると他人の権利を侵すおそれもあります。
調べるのに使うのが、特許庁が無料公開している特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)です。会員登録なしで、誰でもすぐに検索できます。
かんたんな調べ方の流れは、次のとおりです。
- J-PlatPatにアクセスし、「商標」→「商標検索」を開く。
- 調べたい名前(あなたの屋号・ブランド名)を「商標(検索用)」欄に入力して検索する。カタカナ・ひらがな・アルファベットなど、実際に使う表記で試します。
- ヒットした商標の「区分」と「商品・サービス」を見る。同じ名前でも、あなたが売るジャンル(区分)と違えば、共存できる場合があります。
- 読みが同じ・似ている名前もチェックする。文字が違っても、読み方が同じだと「似ている」と判断されることがあります。
ポイントは、「まったく同じ名前」だけでなく「似た名前」も引っかかるということです。この「似ているかどうか」の判断は、実は専門的で難しいところ。検索してグレーだと感じたら、次のステップに進む前に専門家(弁理士)に相談すると安心です。
ステップ2:「区分」を決める――どのジャンルで守るか
商標は、「名前だけ」を登録するのではありません。「その名前を、どんな商品・サービスで使うか」とセットで登録します。この商品・サービスのグループを区分(くぶん)と呼び、全部で45種類あります。
たとえば、あなたがアパレルのネットショップなら「被服(衣類)」の区分、化粧品なら「化粧品」の区分、といった具合に、自分が実際に売っているもの・これから売るものの区分を選びます。
区分選びで押さえておきたいのは、次の3点です。
- 費用は区分の数に比例する:後述しますが、出願料も登録料も「区分1つあたりいくら」で計算されます。多く取るほど守備範囲は広がりますが、その分お金がかかります。
- 実際に使う(使う予定の)区分に絞る:使う見込みのない区分まで欲張って取ると、費用がかさむだけでなく、後で「使っていない」として取り消されることもあります。まずは主力の1〜2区分からが現実的です。
- 将来の展開も少し考える:たとえば今は雑貨だけでも、近いうちに食品も扱う予定があるなら、その区分も検討する価値があります。
区分は種類が多く、線引きが難しいこともあります。どの区分に当てはまるか迷ったら、J-PlatPatの商品・サービス名の検索機能や、特許庁の相談窓口を活用しましょう。
ステップ3:出願する――自分でも、専門家に頼んでもよい
調べて問題なさそうで、区分も決まったら、いよいよ出願(特許庁に「登録したい」と申請すること)です。方法は大きく2つあります。
- 自分で出願する:特許庁に願書を提出します。紙(郵送・持参)か、電子出願のいずれか。費用を抑えられますが、書類の書き方や区分の指定でミスがあると、後で修正(補正)を求められたり、登録できなかったりすることも。
- 弁理士(商標の専門家)に依頼する:手数料はかかりますが、区分の選び方から似た商標の調査、書類作成、途中のやり取りまで任せられます。大事なブランドや、判断に迷う場合は依頼するのが安心です。
出願してから登録されるまでは、おおむね半年〜1年前後かかるのが一般的です(時期により変動します。あくまで目安です)。特許庁の審査官が、登録の要件を満たすか・似た先行商標がないかを審査し、問題がなければ「登録してよい」という通知(登録査定)が届きます。その後、登録料を納めて、はれて登録商標になります。
なお、出願中でも「出願済み」であること自体が、他人の後発出願に対して有利に働きます。使い始めるより前、少なくとも本格的に広げる前に出願しておくのが、いちばん賢い順番です。
出願の詳しい手続きや最新の様式は、特許庁の商標制度のページで公式情報を確認してください。
ステップ4:費用と、登録後に気をつけること
商標登録にかかるお金は、大きく「出願のとき」と「登録のとき」の2回に分かれます。
- 出願料:出願時に、特許庁へ納める費用(区分の数に応じて増えます)。
- 登録料:審査を通過し、実際に登録するときに納める費用。何年分をまとめて納めるかを選べます。
- 専門家への手数料:弁理士に頼む場合は、上記とは別に事務所ごとの手数料がかかります。
具体的な金額は改定されることがあるため、必ず特許庁の公式ページで最新の料金を確認してください(この記事では金額の断定は避けます)。数字は特許庁の産業財産権関係料金一覧で確認できます。
そして見落としがちなのが、商標には期限があるという点です。商標権は10年ごとの更新が必要で、更新しないと権利が消えてしまいます。長く使う名前ほど、更新を忘れないよう管理しておきましょう。
また、登録できても万能ではありません。他人がすでに使って有名になっている名前や、商品の内容をそのまま表しただけの言葉(例:野菜なら「新鮮野菜」のような、ありふれた説明語)は、そもそも登録が認められにくいものです。名前を決める段階から、「登録しやすく・守りやすい名前か」を意識すると、後がスムーズです。この観点はネットショップの屋号・ブランド名の決め方でも触れています。
具体例:ブランド名を守れた店・守れなかった店
イメージしやすいよう、架空の2つのお店で見てみましょう(内容はすべて例です)。
守れなかったBさん:ハンドメイド雑貨のショップを、ある造語の名前で3年運営。SNSのフォロワーも増え、指名検索も伸びてきた矢先、同じ名前を後から商標登録した別の会社から連絡が。泣く泣くショップ名を変更し、パッケージ・名刺・SNS名をすべて作り直し。育てた名前での検索流入も、一からやり直しになりました。
守れたCさん:アパレルのネットショップを始めるとき、まずJ-PlatPatで名前を検索。似た商標がないことを確認し、売り始める前に主力1区分で出願。半年ほどで無事に登録され、その後、同じ名前をかたる偽アカウントが現れたときも、登録商標を根拠に削除を申し立てられました。「調べてから、早めに出願した」だけで、Cさんはブランドを守れたのです。
2人の違いは、才能でも運でもありません。「名前を守る」という発想を、早い段階で持っていたかどうかだけでした。
あなたへの影響
- 名前は早い者勝ちです。 あなたが先に使っていても、他人に先に登録されれば立場は弱くなります。育つ前・広げる前に押さえるのが最も安全です。
- 調べずに使い続けると、逆に「侵害している」側になることもあります。 J-PlatPatでの無料チェックは、自分を守るための最低限の一手です。
- 区分と費用はセットです。 欲張らず、まず主力の1〜2区分から始めれば、コストを抑えて守れます。
- 登録は10年で更新が必要です。 取って終わりではなく、長く使う名前ほど更新管理を仕組みにしておきましょう。
明日やること
- 自分の屋号・ブランド名をJ-PlatPatで検索する(J-PlatPatで、同じ名前・似た読みの商標がないか確認)。
- 売っている(売る予定の)ジャンルの区分を書き出す(まずは主力の1〜2区分に絞る)。
- 検索結果がグレーだったら、弁理士や特許庁の相談窓口にメモを用意して相談する(似ている名前・区分の一覧を控えておく)。
- 出願を自分でやるか、専門家に頼むかを決める(大事なブランドなら依頼も検討)。
- 最新の料金を特許庁の公式ページで確認する(出願料・登録料・更新のタイミングをメモ)。
いきなり全部を完璧にやる必要はありません。まずは今日、自分のお店の名前を1回検索してみる。それだけで、「うちの名前は大丈夫そう」か「早めに手を打ったほうがいい」かが見えてきます。大切に育てる名前だからこそ、守る一歩を早めに踏み出しておきましょう。
チェックリスト
- 自分の屋号・ブランド名をJ-PlatPatで検索した
- 同じ名前だけでなく、似た読み・似た表記の商標も確認した
- ヒットした商標の区分(商品・サービス)まで見て、自分のジャンルと重なるか確認した
- 自分が売る(売る予定の)ジャンルの区分を書き出した
- まずは主力の1〜2区分に絞って考えている
- 判断に迷うグレーな結果は、専門家に相談する前提でメモを残した
- 出願を自分でやるか、弁理士に頼むかを決めた
- 出願料・登録料の最新金額を特許庁の公式ページで確認した
- 本格的に広げる前に出願する、という順番を意識している
- 登録後は10年ごとの更新が必要だと理解し、管理する場所を決めた
※商標や区分の判断、費用は制度改定で変わることがあります。実際の出願や重要な判断の前には、必ず特許庁の公式情報を確認し、迷う場合は弁理士など専門家に相談してください。この記事は一般的な入門情報であり、個別の法的助言ではありません。

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