
AIで返品・キャンセル理由を分類する|声を改善の打ち手に変える
出荷通知を送った翌週、また「返品したい」のメールが届く。理由の欄には「思っていたのと違った」「サイズが合わなかった」——短い一文が、日によって少しずつ言葉を変えて積み上がっていきます。ひとつひとつ対応はするけれど、その声を並べて「で、いちばん多い原因は何なのか」を落ち着いて見る時間は、なかなか取れない。気づけば、同じ理由の返品を毎月くり返している。
そんな覚えはないでしょうか。返品やキャンセルの理由は、実は商品ページやお店を良くするヒントの宝庫です。でも、自由記述でバラバラに書かれた文章のままでは、傾向が見えてきません。今日は、そのバラけた声を対話型AI(ChatGPTなどの生成AI)の力を借りて種類ごとに分け、「次にどこを直すか」の手がかりに変える整理のしかたをたどります。特別なツールは要りません。手元に返品理由のリストと、生成AIがあれば、今日から小さく始められる範囲の話です。
結論:AIは、バラバラの言葉で書かれた返品・キャンセル理由を読み取って、「サイズ違い」「イメージ違い」「品質・不良」「配送」「気が変わった」といった種類ごとに仕分けるのが得意です。仕分けて数えれば、どの原因がいちばん多いかが見え、直すべき一点が定まります。ただし外してはいけない前提が2つあります。ひとつは、リストに含まれるお客様の名前や住所などの個人情報を、そのままAIに貼らないこと。もうひとつは、AIの分類はあくまでたたき台で、微妙なものは人が最終確認すること。まずは直近1〜2か月ぶんの理由を集めて、AIに「種類ごとに分けて数えて」と頼むところから始めましょう。
いま現場で何が起きているか|「声」が埋もれている

返品理由やキャンセル理由は、お客様が自分の言葉で書いてくれたVOC(ブイオーシー=Voice of Customer、お客様の生の声)そのものです。アンケートを取らなくても、返品対応のたびに自然と集まっている、貴重な材料です。ところが多くのお店では、この声が「対応が済んだら閉じるメール」として流れていってしまいます。一件ずつは処理していても、全体を並べて「何がいちばん多いか」を見返す機会がないのです。
理由が埋もれたままだと、何が起きるか。たとえば返品の半分が「サイズが思ったより小さかった」なのに、それに気づかず送料無料キャンペーンで新規客ばかり集めていた——という、ちぐはぐが起こります。本当に直すべきは、サイズ表記や実寸表の分かりやすさだったのに、です。原因の見当がつかないまま返品率(返品された注文の割合)を下げようとしても、から回りしてしまいます。
ここで対話型AIが役に立ちます。バラバラの文章を読んで、「これはサイズの話」「これはイメージ違いの話」と種類ごとに振り分け、それぞれ何件あるかを数える——この地道な仕分けを、AIは短時間でこなします。人が100件の文章を目でグループ分けするのは骨が折れますが、AIなら下ごしらえを肩代わりしてくれます。お客様の声を集めて改善に回す考え方はAIでレビュー・問い合わせを分析してVOC改善とも共通していて、今回はそれを「返品・キャンセルの理由」に絞った使い方です。
一方で、注意点もはっきりしています。AIは、事実と違うことをもっともらしく書いてしまうことがあります。これをハルシネーション(AIが実在しない情報を、本当のように作り出してしまう現象)と呼びます。分類でいえば、書かれていない理由をAIが「たぶんこうだろう」と勝手に決めてしまう、といったことです。ですからAIの分類結果はあくまで下書き。集計の数字や、どちらの種類に入れるか迷うものは、人が確かめる工程を省けません。この確かめ方の考え方は生成AIのハルシネーション対策|情報の正確性を保つでも詳しく触れています。
そしてもうひとつ大切なのが、AIに渡してよい情報の線引きです。返品理由のリストには、たいていお客様の名前・注文番号・住所などがくっついています。それをそのままAIに貼り付けると、思わぬ情報漏れにつながりかねません。個人情報の扱いの基本は、個人情報保護委員会の個人情報保護法についてでも確認できます。AIに渡すのは「理由の文章」だけにして、名前や注文番号などの列は削っておく——この線引きをはじめに決めておくと安心です。入力してよい情報とだめな情報の整理は生成AIをEC業務に安全に使う社内ルール作りが参考になります。
具体例:先月の返品理由を種類ごとに分けてみる
大がかりな準備は要りません。管理画面や対応メールから、返品・キャンセルの理由が書かれた文章を集めるところから始めます。
① 理由の文章だけを、名前を消して並べる
まず、直近1〜2か月ぶんの返品・キャンセル理由を集めます。表計算ソフトにコピーするとき、名前・注文番号・住所・メールアドレスの列は消すか、貼り付けないようにします。残すのは理由の文章だけ。粗くていいので、こんな形に並べます。
・サイズが思ったより小さかった
・写真の色と実物のイメージが違った
・届いたら角がへこんでいた(不良)
・注文したけど気が変わった
・思っていた素材感と違った
・届くのが遅くて間に合わなかった
・サイズ表を見ずに買って合わなかった
② AIに「種類ごとに分けて数えて」と頼む
並べた理由を、後半の「コピペで使えるプロンプト」の形でAIに渡します。AIは、「サイズ違い」「イメージ違い」「品質・不良」「配送」「自己都合(気が変わった等)」といった種類ごとに振り分け、それぞれの件数と割合を表にまとめてくれます。さらに「どの種類がいちばん多いか」「その原因に対して考えられる打ち手」まで、たたき台として出してくれます。自分で全部を目で分けるより、ずっと速く全体像が見えます。
③ 人が分類を確かめ、迷ったものを直す
ここが省けない工程です。AIの仕分けには、どちらの種類にも取れる微妙なものが混ざります。「イメージと違う」は、写真の問題(イメージ違い)なのか、サイズ感の問題(サイズ違い)なのか——元の文章を読み返して、正しい箱に入れ直します。件数の合計が元のリストと合っているかも確かめます。この一手間で、集計が「判断に使える数字」に変わります。
④ いちばん多い原因から、直す一点を決める
分類できたら、件数の多い順に並べて、上位の1つか2つに絞って打ち手を考えます。「サイズ違い」が最多なら、実寸表を分かりやすくする・レビューにサイズ感の声を載せる、といった具合です。あれもこれもと手を広げず、まず一点。返品率そのものを下げる具体策は返品率を下げる方法|原因別の対策、返品対応そのものの流れを整えるなら返品・交換オペレーションの作り方も合わせて読むと、打ち手の引き出しが増えます。なお、返品の受け付け条件そのものは、消費者庁の特定商取引法ガイドにある返品特約の考え方をふまえ、商品ページに分かりやすく明記しておくことが前提です。
コピペで使えるプロンプト
そのままコピーして、( )の部分を自分の内容に置き換えて使ってください。①で名前などを消して並べた理由の文章を貼り付けます。
# 役割
あなたは、EC(ネットショップ)の返品・キャンセル理由を整理する分析アシスタントです。
# 入力素材
- 期間:(例:先月1か月ぶん)
- 商品ジャンル:(例:レディースアパレル/雑貨)
- 返品・キャンセル理由の文章(1件1行・名前や注文番号は含めない):
(ここに①で並べた理由を貼り付け)
# やってほしいこと
1. 理由を次の種類に振り分ける:サイズ違い/イメージ・色違い/品質・不良/配送(遅延・破損)/自己都合(気が変わった等)/その他
2. 種類ごとの件数と割合(%)を、多い順の表にまとめる
3. 判定に迷った理由は「その他」に入れず、「要確認」として文章のまま書き出す
4. いちばん多い種類について、考えられる改善の打ち手を3つ、たたき台として挙げる
# 出力条件
- 表と箇条書きを使い、そのまま社内で共有できる体裁にする
- 専門用語には短い言い換えを添える
- 割合は、件数から計算した数字を示す(推測で水増ししない)
# 禁止
- 書かれていない理由を、事実であるかのように勝手に付け足さない
- 判定に迷うものを無理に分類せず、「要確認」として残す
- 改善案に、効果を断定する表現(「必ず返品が減る」等)や、
医薬品的な効能・効果の言い回し、最上級・誇大な表現を使わない
# 禁止の3つがとくに効きます。AIは親切心で「一般的にはこうです」と空欄を埋めたり、改善案で「これで返品ゼロに」と言い切ったりしがちです。断定や誇大な表現を先に禁じておくと、景品表示法(じっさいより良く見せる不当な表示を禁じる法律)や薬機法(化粧品・健康食品などの効能をうたうことを規制する法律)に触れる言い回しが、たたき台の段階から紛れ込みにくくなります。プロンプトを社内で使い回すときのルール作りは生成AIをEC業務に安全に使う社内ルール作りが参考になります。
あなたへの影響
- 一件ずつ流していた返品・キャンセルの声が、「いちばん多い原因」という一つの数字に変わります。どこを直せば効くのかが見えるので、改善のから回りが減ります。
- 分類と集計の下ごしらえをAIに任せられるので、「振り返る時間がなくて後回し」だった作業の一歩目が軽くなります。100件の文章を人が手で分ける重さを、肩代わりしてもらえます。
- ただし、AIの分類を確かめずに鵜呑みにすると、間違った数字を根拠に打ち手を決めるリスクが残ります。迷ったものを人が確認する工程は省けません。ここを飛ばすと、実際は少ない原因を「最多」と誤解しかねません。
- 情報の扱いにも注意が要ります。理由を集めるときに、お客様の名前・注文番号・住所を一緒にAIへ貼らない。理由の文章だけを渡す。この線引きは、個人情報保護委員会の個人情報保護法についての考え方にもかなう、いちばんの基本です。
明日やること
- 直近1〜2か月ぶんの返品・キャンセル理由を集める(管理画面や対応メールから)。
- 表計算ソフトに、名前・注文番号・住所の列を消して、理由の文章だけを並べる。
- 上の「コピペで使えるプロンプト」に貼り付けて、AIに種類ごとの分類と件数表を作ってもらう。
- AIが「要確認」として残した理由と、迷いそうな分類を人が読み返して直す。
- いちばん多い原因を1つ選び、今月中に直せる一点(実寸表の見直し・写真の追加など)を決めて着手する。
返品の理由は、お客様が最後に残してくれた「ここが惜しかった」という声です。ため息をついて閉じてしまうか、種類ごとに並べて次のヒントにするか——その差が、来月の返品率を少しずつ変えていきます。AIに仕分けを手伝ってもらえば、その一歩目はぐっと軽くなります。まずは先月ぶんの理由を集めるところから、始めてみましょう。

チェックリスト
- 直近1〜2か月ぶんの返品・キャンセル理由を集めた
- 名前・注文番号・住所を消し、理由の文章だけをAIに渡した
- 「書かれていない理由を足さない/迷うものは要確認」とプロンプトで指示した
- 改善案に断定・誇大・効能をうたう表現を禁じた(景表法・薬機法対策)
- AIの分類と件数を、人が読み返して確かめ・直した
- いちばん多い原因を1つ選び、今月直す一点を決めた
- 返品の受け付け条件が、商品ページに分かりやすく書いてあるか確認した
関連テンプレート・無料ツール
- ▶ 返品率を下げる方法|原因別の対策
- ▶ 返品・交換オペレーションの作り方
- ▶ AIでレビュー・問い合わせを分析してVOC改善
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- ▶ 商品ページ改善チェックリスト50
「返品理由がたまっているけれど、どう分ければいいか分からない」——そんなときは、直近の理由を10件ほど教えていただければ、無料診断で、種類分けの切り口と、まず直すとよさそうな一点を3つお返しします。埋もれていたお客様の声を、一緒に次の改善へつなげていきましょう。